骰子の眼

cinema

東京都 中央区

2008-07-17 14:28


人間の欲望と夢の極致に観客を引きずり込むブラックホールのような作品だ

フランシス・F・コッポラ10年ぶりの新作『コッポラの胡蝶の夢』クロスレビュー
人間の欲望と夢の極致に観客を引きずり込むブラックホールのような作品だ

フランシス・F・コッポラのコメント

 私が原作を知ったのは、高校時代の友人ウェンディ・ドニガーを通じてだった。彼女は私が長年書いてきて完成させることができないでいる“Megalopolis”の脚本を読み、返事をくれた。
 彼女の感想は励みになった。さらに彼女は自分の師であるミルチャ・エリアーデが書いた小説“Youth Without Youth”から抜粋した興味深い文を同封してくれた。私は小説を読み、直ぐに思った。「これは映画化できる! 誰にも言うまい。とにかくやり始めよう」と。
この物語は、私の人生に似ている。主人公のドミニクと同じく、私も大事な作品を完成させることができず、もがき苦しんでいた。私は8年間映画を作っていなかったために、66歳にして欲求不満だった。“Youth Without Youth”は、ある意味トワイライトゾーンのようなものだった。教授である老人が若返り、夢であった“言語の起源の研究”を続けられる時間を手にする…。パーソナルな映画作りに戻りたい、という私の気持ちを投影しているようだった。またルーマニアといった異国の地にも魅力を感じた。まだ権利がないにも関わらず、どうやって映画を作ろうかと考えるようになり、分析し始める。希望が見えてきた。

【作品解説】
1930年代、人生の折り返し地点をとうにすぎた言語学者ドミニクは、自身の研究を全うできないまま、昔愛した女性ラウラを忘れられず孤独な日々を送っていた。そんなある復活祭の夜、彼は突然落雷に打たれ病院に収容される。目を覚ましたとき、一命をとりとめたばかりではなく、彼の肉体と頭脳は”若返り”、超常的な言語能力が備わっていた。その謎をめぐり時代の黒い影が忍び寄る中、彼はラウラに生き写しの女性に出会うのだが.....


『コッポラの胡蝶の夢』
監督:フランシス・フォード・コッポラ
出演:ティム・ロス、アレクサンドラ・マリア・ララ、ブルーノ・ガンツ
8月30日より(渋谷Q-AXシネマ改め)渋谷シアターTSUTAYAにて公開
配給:CKエンタテイメント
http://www.kochou-movie.jp/

レビュー(3)


  • キリノさんのレビュー   2008-07-01 10:54

    コッポラの向こう側

    久しぶりに映画らしい映画を見た。時間と空間、意識と無意識を往還しながら生きる人間の可能性と限界を、極限までヴィジュアル化し探求した作品、『コッポラの胡蝶の夢』。実験性と娯楽性を兼ねそなえ、分析的・思索的でありかつ情感に強くうったえかけるこの作品は、人...  続きを読む

  • 池本志賀さんのレビュー   2008-07-08 01:50

    コッポラの胡蝶の夢

    この映画には、コッポラの葛藤と妄想、理想との格闘、 覚醒、時空、様々な異次元な感覚が入り混じっている。 主人公の老人ドミニクは、言語の源流をひたむきに追求し続けていたが、 晩年残された研究時間のないことに絶望し、自ら命を絶つ覚悟で、死と向き...  続きを読む

  • ラスガナルカナルさんのレビュー   2008-07-17 18:54

    コッポラのバベルの塔

    人間は死ねば灰になるだけ。何も残らない。 しかし、この映画『コッポラ胡蝶の夢』は、人間はいつか死に、その存在も思い出も何もなくなるが、死ぬ間際、 “人生は果てしなく、戦いと苦痛と喜びの連続だ”という現実を突きつける。“人生は素晴らしい”というのでも...  続きを読む

コメント(0)