骰子の眼

cinema

東京都 世田谷区

2012-12-22 18:52


監督の養親が撮った8ミリを用いたドキュメンタリーにCGアニメを加えた〈ハイブリッド映画〉

朝鮮戦争後、韓国で20万人以上の子どもが国際養子となった状況を描く『はちみつ色のユン』クロスレビュー
監督の養親が撮った8ミリを用いたドキュメンタリーにCGアニメを加えた〈ハイブリッド映画〉
映画『はちみつ色のユン』より (c)Mosaique films - Artemis Productions - Panda Media - Nadasdy Films - France 3 cinema - 2012

マンガ『肌の色:はちみつ色』を原作に、1960年代から70年代にかけて、朝鮮戦争後の韓国で20万人を超える子どもが養子として各国で迎えられたという社会状況、そして幼少時ベルギーに渡ったユンが家族とともに成長していく過程を、マンガの作者であるユン自身がドキュメンタリー映画監督ローラン・ボワローを共同監督に迎え描いた作品だ。アニメーション、そしてユン自身をめぐるドキュメンタリー映像をミックスさせ、国際養子をめぐる問題、そして複雑な出自を乗り越えようとする主人公を穏やかな筆致で捉えている。まず、そのユンのペンによるアニメーションのタッチこそが、何かを訴えかけるような世界観を鮮やかに画面に表出させる。単に子供を描く際のイノセントだけでなく、子どもが持つ底意地の悪さや自分を分かってもらいたいためのわがままも余すところなく伝えることにより、『はちみつ色のユン』は、いわゆる一般的な家族という枠組みが現代にほんとうに必要なものなのか、を静かに突きつける。

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映画『はちみつ色のユン』より (c)Mosaique films - Artemis Productions - Panda Media - Nadasdy Films - France 3 cinema - 2012
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映画『はちみつ色のユン』より (c)Mosaique films - Artemis Productions - Panda Media - Nadasdy Films - France 3 cinema - 2012

路上や孤児院での生活の苦しさを乗り越え、会うことのない実母への思いを馳せることを、ユンは好きなだけ想像力をふくらませることができるから幸せだと感じる。たとえ血が繋がっていなくても、家族としての結びつきを感じることができる。そしてアートがアイデンティティを保つ源となること。親しみやすい画力のなかに、今作は様々な示唆を含んでいる。『戦場でワルツを』など、アニメーションとドキュメンタリーの蜜月は決して珍しくなくなったが、アニメが〈リアル〉を伝えるもう一つの武器であることを確かに感じさせる作品だ。

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映画『はちみつ色のユン』より (c)Mosaique films - Artemis Productions - Panda Media - Nadasdy Films - France 3 cinema - 2012



映画『はちみつ色のユン』
2012年12月22日よりポレポレ東中野下北沢トリウッドにて公開、ほか全国順次公開

監督・脚本:ユン、ローラン・ボアロー
原作:「Couleur de peau : Miel」(原題:肌の色:はちみつ色)ユン著 クアドランツ/ソレイユ刊
声の出演:ウィリアム・コリン、クリステル・コルニル、ジャン=リュック・クシャール、アルチュール・デュボワ、デヴィッド・マカルス
美術監督:ジャン=ジャック・ロニ
ストーリーボード:エリック・ブリッシュ、アレクシ・マドリッド
キャラクターデザイン:エリック・ブリッシュ
集:エンワン・リケール
音響:カンタン・コレット、マチュー・ミショー
音楽:ジークフリード・カント
主題歌:リトルコメット「ルーツ」
製作:モザイク・フィルム(フランス)、アルテミス・プロダクシオン(ベルギー)、フランス3シネマ(フランス)、パンダメディア(韓国)、ナダスディ・フィルム (スイス)
宣伝美術:小口翔平(tobufune)
日本版編集:山本達也
配給:トリウッド、オフィスH
後援:フランス大使館、ベルギー大使館、駐日欧州連合代表部
2012年/フランス・ベルギー・韓国・スイス/75分/HD/16:9/アニメーション×ドキュメンタリー
公式サイト:http://hachimitsu-jung.com
公式twitter:https://twitter.com/HachimitsuJung

▼映画『はちみつ色のユン』予告編



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