(c) 2008 Magic Hour Films
ビルマで起きた2007年9月の大規模な反政府デモにより、ベールに包まれていたこの国の軍事政権独裁の様子が露わになった。僧侶たちの行進からスタートし、その周囲を取り巻いていた市民たちが次第に団結していく模様は、この作品のハイライトであろう。当時のニュース映像でもなかなか垣間見ることができなかった僧侶と市民のデモに対する警察と軍の強硬的な暴力行為と弾圧に対し、今作の主人公であるビデオジャーナリストたちはカメラで対抗した。特に長井健司さんが背中から射たれるシーンは、複数のビデオの映像による現場の状況を克明に捉えている。日本人の私たちにとってはショッキングであることはもちろんだが、必ず胸に刻みこまなければいけない場面だ。
(c) 2008 Magic Hour Films
今作は鞄にカメラを隠し、命がけで被写体を追いかけていくビデオジャーナリストたちの動揺も含めた心の動きを追いかけながら、事件の全貌を収めようとする。ドキュメンタリー映像素材に、ビルマ人アクティビストであるジョシュアの登場場面を含む再現シーンを加え、シームレスに編集を施すことで、観客にあのデモのただ中にいるようなリアリティを与えている。本当のことを知りたいという好奇心のもと、社会に対する責任を果たすのが優れたジャーナリストであるとするならば、アンダース・オステルガルド監督と今作のスタッフは、虐げられている自分たちの国のことを知ってもらいたいという願いのもと撮り続けたVJたちとともに、ジャーナリストの鑑と言えるだろう。
映画『ビルマVJ 消された革命』
5月15日(土)よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー、ほか全国順次公開
監督:アンダース・オステルガルド
原案・脚本:ヤン・クログスガード
編集:ヤヌス・ビレスコフ=ヤンセン
プロデューサー:リーゼ・レンゼー=ミュラー
配給:東風
2008年/85分/HD/16:9/デンマーク/音声:ビルマ語、英語/原題:BURMA VJ
公式サイト