(C)2008 ARS Film Production. All Rights Reserved.
台湾映画の歴史のなかで、歴代ナンバーワンの興収を叩きだした話題作だが、それも納得のポピュラリティと映画的醍醐味を備えた作品だ。ミュージシャンの夢を捨てきれない男・阿嘉を中心に、彼が偶然手にした60年前に届けられるはずだったラヴレターの行方、ひょんなことから参加することになったバンドの成功譚、そしてそのバンドのマネージャー役を務めることになった日本人女性・夕子との淡い恋が描かれる。さらに冒頭からラストまで通奏低音のように流れる日本人教師が台湾人の女性へ宛てたメッセージまで、様々なストーリーが交錯するが、コミカルさも交えた演出は130分という長さを決して感じさせない。エドワード・ヤンの元でキャリアをスタートさせ、今作がデビューとなる魏徳聖(ウェイ・ダーション)監督の才気は、こうした登場人物それぞれの思いがラストへ収斂される構成力にあるといっていいだろう。
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阿嘉を演じた范逸臣(ファン・イーチェン)の無骨な魅力は、ロックスターへの道を挫折した主人公のギラギラとした欲望を伝え、台湾で活動を続けてきた田中千絵も飾りけのない有子のキャラクターにふさわしい。また、60年前の日本人教師とアーティストである自身の二役をこなした中考介の歌声は、世界に誇る日本の歌声として深く記憶に残ることだろう。 台湾の市井の人々の生活をどこまでも活写することと、日本と台湾の間にある絆と歴史を丁寧に描く今作は、ここ日本でもストレートで心地の良い感動を、幅広い観客に与えるに違いない。
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『海角七号 君想う、国境の南』
2009年12月26日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国で公開
出演:范逸臣(ファン・イーチェン)、田中千絵、中孝介
監督・脚本:魏徳聖(ウェイ・ダーション)
配給:ザジフィルムズ/マクザム
提供:マクザム
2008年/台湾/130分/カラー/シネマスコープ/Dolby SR
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