(C)Jun Ishikawa 石川純
予定調和の「物語」を信じることが難しい現代。劇作・演出家、松井周は、そこに生きる人々を見つめ、その病理を活写しながらなお、われわれが共有可能な物語を探す。フェスティバル/トーキョー09春の「火の顔」では日本人の身体・言語感覚を海外戯曲の中に浮かび上がらせたサンプル主宰・松井周が、人と人、人と物、空間と物など、さまざまなものの間に生まれる「磁場=物語」を見つめる意欲作。
(C)Jun Ishikawa 石川純
劇団・サンプルとその母体である青年団のメンバーを中心に、中野成樹+フランケンズ、柿喰う客、チェルフィッシュと、それぞれに個性的な劇団からの役者が揃い「松井ワールド」を作り上げている今作。“上の世界”で夫婦を演じる男女、そして“下の世界”で不思議なコミュニティを形成しているホームレスの集団。その“下の世界”では「ネズミ」「ウサギ」そして名のない「動物」という名の人々が「ホームレスドクター」という名のリーダーによって統率されている。そしてそこへ変化をもたらす、女。動物を連想させる“嫁”と“姑”のふたりの女やただただビラを配り続ける男の登場によって、リアルと虚構を行き来する。そして物語は、中心となる女を巡ってカオスと化した“世界”へと進んでいく。
「あの人」にこんなことをさせたい、あんなことをさせたいと思って膨らませていった作品です。
「この人」じゃなくて「あの人」という距離感というか隙間というか
ちょっとぼんやりする感じが好きでこんな題名になりました。
「あの人」は尾びれ背びれがついて元の姿とは違ったものになってしまうこともあるかもしれませんし、そもそも元の姿が忘れ去られることで「あの人」が存在するのかもしれません。
できれば「あの人」には長生きして欲しいです。
皆様の記憶の中でいつまでの点滅を繰り返すような存在として。
松井周
(C)Jun Ishikawa 石川純
■サンプル カンパニープロフィール
劇作家・演出家・俳優の松井周が作・演出する劇団。2004年に処女作「通過」と2作目「ワールドプレミア」がそれぞれ日本劇作家協会新人戯曲賞入賞。「地下室」「シフト」と話題作を続けて発表し、青年団リンクを経て、5作目「カロリーの消費」で劇団名を「サンプル」とし、辻美奈子、古館寛治、古屋隆太の3名の俳優とともに劇団として始動した。
※カンパニー公式サイトはこちら
フェスティバル/トーキョー09秋との共同製作 サンプル(松井周)「あの人の世界」
日時:2009年11月6日(金)~11月15日(日)※日によって、14:00~/15:00~/19:30~のいずれかの開催
会場:東京芸術劇場小ホール1(東京都豊島区西池袋1-8-1)
作:演出:松井周
出演:辻美奈子、古館寛治、古屋隆太、山崎ルキノ、渡辺香奈、奥田洋平、石橋志保、深谷由梨香、芝博文、田中佑弥、善積元、羽場睦子
料金:一般3,500円 学生3,000円 高校生以下1,000円
※フェスティバル/トーキョー09秋公式サイトはこちら