フランスの新鋭ファブリス・ゴベールの監督デビュー作品。一人の男子高校生の失踪をきっかけに、フランスのハイティーンの生活と、その裏にある様々な関係、嘘と現実と欲望を描いた作品。ミステリーを軸としていますが、そのミステリーは高校生の実生活をあぶり出す火のような、軸でありながらもバイプレーヤーのような役割を担っています。
ストーリーは、男子高校生の18歳の誕生日パーティーを起点に、4人の主人公が時間をさかのぼったそれぞれの視点から失踪事件に関係していくもの。その4人に関わる多くのクラスメート、また先生やコーチなど、誰もが真実の断片を見聞きしながらもその真実が十代の欲望によってずれていく、そして4人それぞれの見方、感じ方が別の人物から見るとそれぞれに異なり、そしてそれこそが失踪事件をより複雑にしていく過程が面白いものとなっています。また同じ場面が数度にわたり(別視点で)繰り返されることにより、そのシーンの時間が重層的に見る側に再構成され、ミステリーとしての効果、すなわち謎解きもきちんとフォローされるようにもなっています。結末に関しては賛否は有るとは思いますが、90年初頭のフランスのハイティーンの現実を上手く捉えているように思える映画です。
カンヌ国際映画祭2010ある視点部門審査員特別賞他3部門ノミネート、セザール賞2011最優秀初監督作品賞ノミネート。そして売りはもうひとつ、劇中曲をソニック・ユースが手がけています。