この映画を観ると、ほとんどの男性は自分が思春期だったころの母親との関係が思い出されて、主人公に感情移入できるのではないだろうか。
幼いころは母親からの愛情を素直に受け入れいたはずなのに、いつから耐え難く受け入れられない存在になってしまったのか。そして、また母親もいらだつ息子を受け止めきれないように見える。描かれる母子の衝突は誰もが経験したような出来事が多い。母親の服装が気に入らない、食べ方が気に入らない、どうでもいい話を延々と続ける…息子が学校の話をしてくれない、音楽を聴いていて質問に答えてくれない…。二人はお互い相手に対して愛情を持っていることはわかっている。しかし、同時に激しい憎悪も存在している。監督の半自伝的な作品ということだが、19歳でこの愛情と憎悪の葛藤する感情がぶつかりあう様を実に客観的に冷静に描いているということに驚いた。
ラスト、川べりに腰掛けた母子がそっと手を握り合う。原題の「I Killed My Mother」は不器用ながらも憎悪の対象としての母親を消し去ろうとする主人公の人間的な成長を表しているように思えた。
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