2013-08-20

美輪明宏ドキュメンタリー ~黒蜥蜴を探して』クロスレビュー:優しくも力強いその生きざま このエントリーを含むはてなブックマーク 

美輪明宏さんといえば、昨年末にNHK紅白歌合戦で「ヨイトマケの唄」を熱唱したことが記憶に新しい。歌手生活61年目、77歳での初出場ということだけでも話題の中心になったほどだ。自身のことを天草四郎の生まれ変わりと言い、黄色いロングヘアーもトレードマークとなり、元祖ビジュアル系アーティストとして、その存在感、地位は確固たるものというイメージがあった。
しかし、今回の試写会を通じて、その知られざる実像が浮き彫りにされると、あまりに未知の部分が多く、光と影が常に交差するような生きざまに圧倒された。

長崎では原爆の被爆者であったこと。ダブルアイデンティ:シスターボーイと形容され、女装して映画のヒロインを演じたこと。代表歌のヨイトマケ野の唄が要注意歌謡曲(反社会歌)のそしりを受け、長らく民放から締め出されていたこと。(また、武田鉄矢の母に捧げるバラードの歌詞の一部も「ヨイトマケの唄」を模倣していた)
その一方で、多くの文化人たちから愛され、独特の表現力で幅広いジャンルで活躍してきたこと。しかもその生きざまは、波乱万丈とか破天荒なものではなく、淡々としつつも、かつ堂々としていて、清々しさえ漂う。その支えとなってきたのは美輪さんの揺るぎない信念と美意識だ。

今でこそ性別に対する偏見は、多少は和らいできたものの、自分の生き方を世間・時代に知らしめ、認めさせ、最終的には一目置かせることができたのは、美輪さんがひとえに真の表現者・芸術家であったことに他ならないからだと思う。
本作品は、フランスではテレビ番組として制作されたこともあり、放映時間はかなり短い。しかし、それゆえに、美輪明宏さんの人生を凝縮した代表的な作品と言える。

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kansa5959

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kansa5959

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