2013-07-26

『トゥ・ザ・ワンダー』クロスレビュー:テレンス・マリックが描き上げる、抒情詩的映画 このエントリーを含むはてなブックマーク 

映像の美しさが全てを語っている。美しい世界の断片を一か所に寄せ集めたような映像美は抒情詩的と言える。特に光と陰影の描写の美しさは圧巻で、リアルであるがゆえの登場人物たちのもどかしい気持ちの動きを、その映像美で作品として包括している。

2つの舞台である、パリ・モンサンミシェルが表す有機的な縦方向のグリッドと、オクラホマの片田舎、バードルズビルの極めて平面的な横方向のグリッドが非常に対比的で、オクラホマの草原の中で、2人の愛は少しずつ移ろって行く。ベン・アフレック演じる主人公の二ールは多くを語らない。敢えて語らせないことで、この物語への感情移入の方法を、制限しないようにしているのではないだろうか。

監督のテレンス・マリックは、ハーバードとオックスフォードで哲学を学んだ後、MITで教鞭を取る学者である。映画監督としてのキャリアは40年もあるにも関わらず、作品は6本のみ、という寡作ぶり。ああ、哲学者だからこんな小難しい映画なのね。というのは浅はかな見方で、この作品においてはどこにでも偏在する愛の形を、神父の神への愛に重ね合わせて見事に描き出している。

本作品は、映画にスリリングなストーリー性や、ワクワクするような非日常的ハプニングを求める人にはおすすめできないが、テレンス・マリックの心揺さぶるような映像美を楽しみたい人には是非観て頂きたい映画である。

キーワード:

トゥ・ザ・ワンダー


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