骰子の眼

cinema

東京都 中央区

2013-08-06 17:28


台詞らしい台詞がほとんどなくとも、この男女の愛の姿に感情がえぐられているような気分になる

テレンス・マリック監督がベン・アフレックを迎え描く映画『トゥ・ザ・ワンダー』クロスレビュー
台詞らしい台詞がほとんどなくとも、この男女の愛の姿に感情がえぐられているような気分になる
映画『トゥ・ザ・ワンダー』より (C)2012 REDBUD PICTURES, LLC

撮影監督を担当したエマニュエル・ルベツキの光や風が手にとって感じられるような映像、そしてワーグナーやチャイコフスキーなどクラシックを使用した音楽と、『ニュー・ワールド』『ツリー・オブ・ライフ』といったこれまでの作品に通底する、自然と人間との関係をあらためてあぶりだすような荘厳な映像感覚を持ちながら、テレンス・マリック監督は今作で男女の恋愛関係の中で生まれる機微を丁寧に捉える。フランス西海岸の小島、モンサンミシェルを拠点に、アメリカ・オクラホマの小さな町へと居を移した男女を中心に、熱に浮かされたように愛にのめり込む姿と、次第にそれが時間とともに薄らぎ遠のいていく様を痛切に描いている。

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映画『トゥ・ザ・ワンダー』より (C)2012 REDBUD PICTURES, LLC

ベン・アフレックが近年監督として進境著しいなかあえて出演を決めた寡黙な男ニールとオルガ・キュリレンコ演じるマリーナの間の近づき、遠のいていく距離は、「強すぎる愛は自分を、そして相手を不安にさせる」ことを厳しい眼差しで伝える。そのなかで、ハビエル・バルデム扮するカトリック教会の神父、そしてニールの幼なじみの女性ジェーンを演じたレイチェル・マクアダムスの存在が、普通の恋愛ドラマであればあくまで両者の自己中心的な痴話喧嘩になってしまいそうなこのストーリーに客観を与え、ある種の神聖な感覚を付加する。「永遠に続くものなんてない」という、言葉にするととてもシンプルだけれど当たり前のこと、でも恋愛の最中ではなかなか実感が難しいことを、美しい映像をもって感じとることができる。

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映画『トゥ・ザ・ワンダー』より (C)2012 REDBUD PICTURES, LLC




『トゥ・ザ・ワンダー』
8月9日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

監督・脚本:テレンス・マリック プロデユーサー:サラ・グリーン、ニコラス・ゴンダ
出演:ベン・アフレック、オルガ・キュリレンコ、レイチェル・マクアダムス、ハビエル・バルデム、 タチアナ・チリン、ロミーナ・モンデロ、トニー・オーガンズ
撮影:エマニュエル・ルベツキ
プロダクションデザイン:ジャック・フィスク
衣装デザイン:ジャクリーン・ウェスト
音楽:ハナン・タウンゼント
2012年/アメリカ/112分/カラー/英・仏・西・伊語/シネマスコープ/5.1ch 
原題:TO THE WONDER
字幕:丸山垂穂
(c)2012 REDBUD PICTURES, LLC
提供:東宝、ロングライド
配給:ロングライド
宣伝:クラシック
公式サイト:http://www.tothewonder.jp

▼映画『トゥ・ザ・ワンダー』予告編

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