まず最初におススメするのが『チャイルドコール 呼声』。
1998年に公開された知る人ぞ知る傑作『ジャンク・メール』の鬼才、ポール・シュレットアウネ監督の最新作で、昨年のTNLFで上映し、その時だけユーロスペースが“シアターN化”したというノルウェー映画17年ぶりの“18禁”サイコ・スリラー『ネクスト・ドア/隣人』につづいての登場です。
因みに、『ジャンク・メール』が公開されたのってユーロっぽいけど実はシャンテだったってご存知ですか? ボクはその頃名古屋に住んでいたのでゴールド&シルバー劇場というストリップみたいな名前の映画館で観たんですけど。
今回の『チャイルドコール 呼声』も『ネクスト・ドア/隣人』につづき鋭利な印象のサスペンス。詳細語れませんが、愛する我が子をDV夫から必死に守ろうとするあまり精神に変調を来してゆく母親が主人公の哀しくもスリリングな物語です。
『ネクスト・ドア/隣人』を観た時はデヴィッド・リンチ、もしくはロマン・ポランスキーに近い肌触りを覚えましたが、このシュレットアウネ監督の語り口はズバリ、ヒッチコック流。本作ではそのヒッチコック的語り口にさらに磨きがかかっていて、ヒロインの母親が迷い込む心理迷宮の世界にグイグイ惹き込んでくれます。
そんな母親を演じるのが、『ミレニアム』3部作で世界的ブレイクを果たして以降、ガイ・リッチーやリドリー・スコットやブライアン・デ・パルマといった並み居るハリウッドの監督たちから引っ張りダコ。のみならず、ついにはあのローリング・ストーンズのPVにまで抜擢された今や北欧を代表する女優ノオミ・ラパス。ストーンズのPVではなんとトップレスにもなっています!(イエス! トップレス!) 売れても脱ぐ女優さんって素敵ですよね♪
また、チャイルドコールを売ったのをキッカケにヒロインに少しずつ心を寄せてゆく神経質そうな家電販売店の男を、『ネクスト・ドア/隣人』で主演し、昨年公開されたまさに昨今の体罰問題を予見したかのような傑作『孤島の王』では極悪看守を演じていた名優クリストファー・ヨーネルが演じています。因みにこの方はシュレットアウネ監督の奥さんの映画にも出ていて(これがまた面白い!)、そこでもやっぱり神経質そうな役を演じているんですね。今にこの方もハリウッドに招かれ、トム・クルーズあたりの映画の悪役をやるんじゃないかと個人的には思っているんですが…。
というワケで、観どころ満載の『チャイルドコール 呼声』。映画祭では1回のみの上映ですが、監督からどんなお話が聞けるのか、今からとても楽しみです。そしてその時にはぜひ、98年に買った『ジャンク・メール』のパンフレットにサインしてもらおうと思っています!
「トーキョー ノーザンライツ フェスティバル 2013」 http://www.tnlf.jp/
『チャイルドコール 呼声』
原題:Babycall/英題:The Monitor
監督:ポール・シュレットアウネ(Pål Sletaune)
2011年・ノルウェー=ドイツ=スウェーデン
ノルウェー語・スウェーデン語・英語(Norwegian,Swedish,English)
96min
2012年ノルウェー・アカデミー(アマンダ)賞、主演女優賞ほか4冠
【ストーリー】
夫の暴力から逃れ、児童福祉サービスの計らいで8歳の息子アンデシュと隠れて暮らし始めたアナ。息子を守りたい一心で手に入れたチャイルドコールから、ある日、悲痛な叫び声が聞こえてくる。必死で助けを求めるその声はアナの妄想の世界からの声なのか、はたまた現実の叫びなのか。電器店で親しくなった男ヘルゲの母子関係とも絡み合い、物語は予想を越えた展開を見せてゆく…。