冒頭、暗いスクリーンに映し出される小さな女の子をブランコで遊ばせる母親と白髪の男。また、男の独白がぼそぼそと聴きとりずらいまま、長々と続いていく。『映画/革命』を読み返してくればよかったと思いながら、前夜の寝不足もあって、自分には、この映画を鑑賞する映画的教養も資格もないのだと後悔だけで観始める。更に、致命的な問題は、最初に白状するが、この映画のタイトル「美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう」が取られた、2006年に足立正生が撮った『幽閉者 テロリスト』を観ていないのだ。
今の東京の街の光景を写しながら足立正生が、自身について語っていく。作品のフッテージは挿入されていくが、どの映画からのものかは、エンドクレジットを目を凝らして見ないとわからない。説明が排除された映像。
しかし、なぜか映画に惹きつけられていく自分がいる。映画監督、革命家として生きてきた人生を語る足立正生の横で、話を聴いているような気になってくるのだ。
「アンドレ・ブルトン『シュールレアリスム宣言』を読んだ時、すべてが判った。映画も、政治も、革命も、僕の中でモヤモヤとしていたもの、そのすべてをぶちまければいい。だから僕は、シュールレアリストなんだ」
その一言で、シュールレアリスト足立正生の人生が腑に落ちた気がするなんて言ってはおこがましいが、目の前にある現実(当時の日本とパレスチナの政治状況)と、それを見て感じる自分のモヤモヤ故に、映画監督であり、活動家であったんだと思うと、観始めたときに感じていた躊躇は解消されていて、むしろ高揚感さえ感じていた。
次に撮りたい映画について、熱く語る足立正生は素晴らしい。
更に絶望的になったとも思える日本とパレスチナの状況で、若松孝二を失った今年、この映画が公開されることの意義は大きい。『映画/革命』を読み返してから、もう一度観に行こう。