「 難病と闘う 」と一言で片付けるのは、とても簡単で、とても無意味な事です。
私は、一人息子が出生体重 970g の超未熟児と言う経験を持ちました。
出産時に看護師さん達から、「 おめでとうございます。 元気な男の子ですよ。」
なんて言われて、わが子を胸に抱く、そんなドラマのワンシーンの様な場面を
自分の身の上にも起こるのだと信じて疑いませんでした。
現実は、シーンと静まり返り、テキパキとやるべき事をやる医療スタッフの気配を
感じるだけでした。
母親がショックを受けるのを防ぐと言う名目で2日間、わが子との面会は許されませんでした。
丁度100日間の入院生活と、その後の数年に及ぶ通院生活を経験して分かった事があります。
「 誰も理解してくれないし、わが子が病気なのは、誰にとっても他人事。」
この映画が、CF ( のう胞性線維症 )と言う難病を抱えて生まれて来た
アナとイサと言う双子の女の子達のドキュメンタリー映画だと言う事で、
同じく病気を抱え、半分、障碍児だった息子を育てた経験の有る私は
号泣してしまうのではないかと、バッグの中にバスタオルを忍ばせて観ました。
全然、号泣はしませんでした。
と言うのも、この映画、お涙頂戴が趣旨ではないからです。
試写会後のアナとイサ本人達が登場してのトークショーで彼女達も言っていました。
「 この映画は、臓器移植の映画ではなく、女性の物語です。」
確かに、その通りです。
トークショーでは、アナとイサは、鬱になった事も有ると明かしますが、
映画の中では、そんな事は描写されていません。
アメリカで生まれ育った双子の女の子達が、先天的な病気を持って
入院生活も度々経験したけれども、
学校生活、病気仲間との交流、恋愛、結婚、臓器移植等の経験を経て
40歳の今まで元気に生きていますよ、と言う映画なんです。
まるで青春映画を観ている様に、爽やかなのです。
映画の中では、お母さんが余り登場しませんが、
私はお母さんの存在こそが1番凄かったと思います。
子供が五体満足で無い場合、母親は、先ず自分を責めます。
自分のせいで子供が病気になったと考えます。
私は自分の子供が入院中、そういう自分を責める母親達を嫌と言う程
見て来ました。
でも責めても、子供の病気は治らないのです。
40年間、病気のわが子達を見守り続けたお母さんに、私は最大級の賛辞を送りたいです。
今度はお母さんの視点からのドキュメンタリー映画を作って欲しいと思いました。
この映画は臓器移植に賛成であるとか反対であるとかではなく、
自分や家族が病気であるとか健康であるとかではなく、
全ての人に観てもらいたいと思います。
「 生きたい! 」と強く願う人達のパワーに圧倒されると思います。
今、格差社会と言われる様になりましたが、
「 生きる 」事も、意識に格差が有る時代なのかなと思いました。
私達日本人には、もしかしたら、
「 何が何でも生き抜く!」 と言う強い意志が欠如しているのかも
しれないな、と映画を観た後に思いました。
私の母が癌で4ヶ月の余命宣告を受けた時に、
私は医者の言葉を鵜呑みにして、何か自分なりに母の病気と闘う事を
何もしなかった事を、思いました。
「 生き抜こう! 」と思った人だったら、もうちょっと母の寿命を
伸ばせたのかもしれないな、と。
「 ミラクルツインズ 」のポスターは、アナとイサがシャボン玉を
吹いている写真が使われています。
これがとても重要な意味を表しているので、
是非映画を観て、この写真に隠された深い意味を考えてみてくださいね。
いい映画でした。