2012-09-17

【『ハンガー・ゲーム』クロスレビュー】米国リアリティ番組の定型フォーマットをベースにしたサバイバル・アクション このエントリーを含むはてなブックマーク 

「ハンガーゲーム」は、「バトルランナー」や「バトルロワイヤル」などの独裁政権下での殺し合いをゲーム化したディストピアという、米国リアリティ番組の定型フォーマットをベースにしたサバイバル・アクションである。
設定そのものからして目新しいものではなく、敢て新しいアイディアを探すとするなら、恋愛や友情をからめた人間ドラマの要素を持ち込んだところにあるが、それも全てヒロインの勝利で終わる予定調和的な演出に軽い味付けをする程度のもので、意外性とか、手に汗握る展開に乏しく、正直いって退屈で、2時間半近くの長丁場をもたすには物足りない展開に終始した。
映画の設定がありきたりということに目をつぶるとして、キャスティングで補えれば、それなりに間を持たせることも可能であるが、それにしても、ヒロインのカットニスを演じる女優(ジェニファー・ローレンス)のアクションは、今ひとつで、もう少し肉体を鍛えるなど、それなりの準備をしたうえで撮影に臨むことはできなかったものかと、はがゆい思いがした。彼女の走り、跳躍、格闘場面などのアクションの動きには、ピュアな少女らしさを敢て残したものという好意的な見方も可能かもしれないが、相当にゆるく、贔屓目に見たとしても、鍛え方が足りなかったのではないか、あるいは、そもそもキャスティングにミスがあったのではないか、という思いにとらわれる。比べるのもどうかとは思うが、たとえば「グリーンディスティニー」で当時の若手女優チャン・ツイィーが見せてくれたアクション演技時の身体能力には、演出力を超える魅力が備わっていたように思う。
試写室でもらったカタログによると、この映画は4週連続の全米1位に輝くメガヒットとして、“社会現象的”な人気作品であるそうな。いかにもリアリティ番組大好きなアメリカ人向けの素材であり、ヒットの社会的背景に興味が湧かないこともない。すでに続編の日本公開も決定したとのことであり、角川映画得意の宣伝力を背景に日本でも同様にヒットしたとしても、何ら不思議ではない。すでに我々は、AKB48という“メガヒット作”(!!)を社会現象として受け入れているではないか。総選挙やじゃんけん大会なるものも、リアリティ番組的なサバイバル・ゲームである(私自身は全く興味ないけれど)。「ハンガーゲーム」もストレス解消のヒマつぶしとしてみれば、それなりに楽しめる娯楽作品ではある。

キーワード:


コメント(0)


M.-Cedarfield

ゲストブロガー

M.-Cedarfield