2012-07-22

『監督失格』(2011.11@UPLINK) このエントリーを含むはてなブックマーク 

Cocco主演の『KOTOKO』を見て、この作品を思い出したので、今ごろだけど感想を。
作品の内容は少しも似てないけど、人から「重い」と言われても、じぶんはそう感じなかった、という点でのみ共通してる。

不倫についての考え方は、こういう業界の人のことだから特殊ということもあるのだろうし、まあ、置いておくとして。

不倫相手だった由美香とすでに別れていたにも関わらず、由美香が亡くなってから監督がスランプに陥り作品を作れなくなって、由美香のドキュメンタリーを作ろうとしていたが、いつまで経っても編集が終わらないでいる。
その理由が、あるとき分かった。
編集を終えてしまうことで、由美香が過去になってしまうことを無意識のうちに恐れていたから。

そして、どんなに編集をしても、亡くなったというのに、いちばん大事なシーンは由美香が「幸せです」というシーン。
ベッドの中でカメラを回しながら監督が「いま幸せですか?」と問うと、眠たげな物憂げな調子で「幸せですうー」監督「ほんとっ?」由美香「ほんとだよ」、というそのシーン。

この作品が、彼女が亡くなっているところを監督が発見したときにカメラを回していて、そこを使っているというスキャンダラスな作品だとも知らずに見たから、そんなシーンにびっくりもしたけど、それは主題的にメインではなくて、監督がどれだけ由美香に恋をし続けていたか、という作品だった。
たまたま見にいった日は監督が上映前にスクリーン前で挨拶をしてくれた日で、監督は「可愛い由美香を見てやってください」と言って挨拶をしめていた。今でもまだ恋しているみたい。

若くして亡くなるのはもちろん悲しいことだけど、作品的には、一生に一人しか出会えないくらいのドストレートに愛してくれる人に出会えてること、愛されてる部分がよく描かれていたから、見終わったときぜんぜん重い気持ちじゃなかった。むしろ「暗い気持ちになった?」と問われて「なんのことだろう?」と思ったくらいに。

(愛されてるのは、母親からも。スキャンダラスなシーンは「人の死を見世物にして」という批判があるようだけど、実際彼女の姿は出てこないわけだし、そのシーンを入れたのは、母親の慟哭に彼女への強い思いがよく表れていたからこそだと思う。母親の彼女への思いがこの作品において重要なのは、母親のインタビューの内容からも、よくわかる。)

この監督にしか作れなかった、愛情あふれる作品だった。

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