ヨーロッパを空から捉えたキラキラと輝く夜景に、働く人たちの写真がまあるくマッピングされたポスターが素敵で、ついほのぼのとした素敵な仕事を色々見れるのかと思ってしまったが、これは『いのちの食べ方』の監督の新作。
見終わる頃にはこのポスターの見方はがらりと変わっていた。
夜。普通の人々は眠る時間帯。
人々が安心して眠りにつけるように作られた仕事たちは、驚くほど多岐にわたる。
医師などの命の危険を取り除くお仕事はもちろん、情報伝達するためのお仕事、
欲望を満たすためのお仕事、外敵から守るためのお仕事、などなど。
正直、こんな夜中にやらなくても…というお仕事も、
困った人たちを排除するひどいお仕事も、
退屈で見ていられないお仕事も、悲しいかな必要なのだ。
『いのちの食べ方』同様、説明は一切無く、仕事している人たちの気持ちも語られることは無い。不親切なくらい何のインフォメーションも無いので、逆に『何を目に留めて、何を問題視するのか』と言ったこと全てが、見る人に委ねられていることに気付く。
「ヨーロッパを描きたかった」という監督の言葉がパンフレットに収められているが
(このパンフレットがまたよくできているのです)、結果としてヨーロッパだけでなく、
日本や、世界中の先進国に置き換えることが出来る映画だと思う。
『いのちの食べ方』ほどにビジュアルショックは無いので地味な感じもするけれど、
「豊かさとは」
という同じ問いを投げかけられている気がした。