2012-12-18

池上彰やマイケル・サンデルと一緒に観たい映画:『アルマジロ』クロスレビュー このエントリーを含むはてなブックマーク 

不謹慎なようだけど、とても良かった。
どうやって撮ったんだろう?と思う程、映像も、音も、クオリティーが高くて、
本当に不謹慎なようだけど、兵士に感情移入できてしまって、
飽きずに最後まであっという間に見れてしまった。

そして劇中、何度も自分の考えに迷いが生じ、
「ああ、ここにサンデルさんか池上さんが居たらなぁ」と思うシーンが沢山あった。

タリバンというと、残忍で無差別にテロ行為を行う悪者というイメージから、
殺されてしまっても構わないのでは?と思っていた。
祖国を離れ、命がけでアフガニスタンに赴くデンマークの若者は
正義だと思っていた。

ところが戦場では、治安部隊による民間人の誤爆だけでなく、
家(を含む全て)を破壊され、命綱の家畜を殺され、
やっとの思いで耕した畑をパトロールで滅茶苦茶にされ、困窮する現地の人々から、
治安部隊が歓迎されていない様子が映しだされる。

まだ幼い子供達が、食べ物をねだりつつもデンマークの兵士たちに感謝するどころか
「お願いだから帰ってよ」と口々にまくしたてる姿に、
この子供達が大人になったら、「自分の家族を誤って殺した外人達を追い出す為」に
タリバンに加わるかもしれない、という可能性が頭をよぎり、
タリバンが絶対悪であるという考えがぐらぐらと揺らぎ始めた。

そもそもアフガニスタンの歴史についても良く知らない。
池上さんが居てくれたら,どうしてこの国がもう30年以上も戦場化しているのか、
判り易く教えてくれるだろうに。

憲法改正によって自分の子供が戦場で殺される心配もさることながら、
自分の子供が誰かの子供を殺すことの罪について、全く考えて来なかったと思う。
武器を持たず、何の罪も無い幼い子供を誤って殺してしまうことだってありうる。
そこには当然憎しみが生まれる。
戦場ではそれは仕方ないよ、と片付けられてしまうが、
サンデルさんだったらどう言うだろうか。

あまりに普通な若者のデンマークの兵士をみていると、だんだん愛着がわくし、
無事で居て欲しいと願う。
けれど仲間の兵士が地雷で死んでしまい、志願者を募って夜襲を掛けに行くシーンでは、
共感しながらも、これって平和維持という名目の報復なんじゃないかしら?と疑問が芽生える。

初めは初々しかった兵士達はどんどんマッチョになって行き、
タリバン兵を殺す事に罪悪感を持たなくなって行く。
実際戦場でタリバン兵を殺害した兵士は、狩で獲物を仕留めたように
誇らしげに自慢して回る。周りもそれをよくやった、と讃える。
現地の人の平和のため、というのは何だか霞んでしまっているように見える。

そもそもこのデンマークの若者達が、遠くアフガニスタンの平和の為に
命がけで戦う事の裏には、どんなメリットがあるんだろう?
デメリットは?
忘れてしまいがちだけど、デンマーク国内のあらゆる場所が、テロの標的になるのは間違いない。池上さんが居てくれたら、もっと他の可能性についても解説してくれるはずなんだが。

この『アルマジロ』というタイトルは、基地の名前から来ているようだけど、
そもそもの語源には、『小さな武装したもの』という意味があるらしい。
近い将来日本の若者がこのアルマジロ基地の兵士達と同じ状況になる可能性が高くなってしまった今、実際に戦場に行くってどう言う事なのか、想像力の無い私に沢山の考えるきっかけをくれた貴重な映画だった。

『007スカイフォール』も勿論見るけれど、『アルマジロ』も皆に見て欲しいと思う。

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松子

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“見果てるまで視たいのです。”


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