注意!!
AGP(AGP online) ニュースレター103号連載記事
頼んでもないのに。vol.9 を少しアレンジしてます。
あらやだ、もう11月も半ば。そう、アタシはいつも通り締切直前にこれを書いているのでそんな期日なだけなんだけど。で、個人的にちょっといろいろとあって、映画化された「それでも花は咲いていく」(監督は原作者である前田健)がDVD化されてたからとりあげようかと思ったんだけど(アタシの好きな平山浩行も出てることだし)そんな時間もなく断念。
なんで、約1か月前に見た映画にしてみるわ。まぁ、老化現象が進んでるから思い出す苦労と時間をひねり出す(正確には、編集長の胃を痛めつける)のとどっちがいいかってことなんだけど。そう、アタシのような下女は選択の余地がないのよっ。
そんなわけで。見てきたのは「あしたのパスタはアルデンテ」。ええと、公式webサイトアドレスはこっち(http://www.cetera.co.jp/aldente/)。
ひらがなと片仮名のタイトルだから結構やわらかい感じがするわね。こういうのは大事かも。大体さー、みんな原題のまんま「インディペンスデイ」とか「メインインブラック」とか、そんなのわかるっちゅーの。だっちゅーの。つか、例に挙げる映画が古すぎることに危機感を抱いたほうがいいわね、アタシ。
まぁ邦題については置いておくわ。後で言及するから。
<あらすじ>
南イタリアでパスタ会社を経営する名門一家の二男であるトンマーゾ。経営引継ぎの晩さん会のために帰郷した彼は、その晩さん会でゲイであることを告げるつもりであることを長男に事前に相談(ほかにも隠していることはあるんだけど)。意外にも長男は驚くことなく受け入れ、安心したトンマーゾ。しかし、その晩さん会でなんと長男が驚くべき告白をし、しっちゃかめっちゃかに。いつの間にかトンマーゾが会社の経営を任されてしまい・・・。
まぁ、いわゆるコメディ映画といえばその範疇なんだろうけど、なんつーか“家族をめぐる問題は日本だろうが海外(この場合はイタリアだけど)でも大変なのねぇ・・・”というのが正直な感想。
むしろ同族経営というリアリティがより日本的なカミングアウトをめぐる問題とかを思い出させるのかもしれないわ。って、イタリアが本当にファミリー的なところが残ってるのか知らないけど。映画でも親族間の晩さん会とかやってるし、多分あってるのよ、おそらく。
で、長男の告白を聞いてお父ちゃんがぶっ倒れてしまうのね。とってもまぁなんというか。いや、それくらい親って鈍い時があるし、ものすごくショックなんでしょうね。うちの親みたいに、アタシが普段からオネエ丸出しでも気づかない(気にしない、正しいのかもしれないけど)親もどうかと思うけど、倒れられるよりはマシかもしれないわ。
で、詳細はまぁ映画を見てもらえばいいし(まだ、フィルムを使いまわして全国で上映してるのよ。来年初頭まではやってそうな感じ)、個人的にはまぁ1800円だとちょっとしんどいけど、1000円デーやレイトショーならあり、って印象。
と、いうのも。ちょっとコメディに見るにはやや重い部分があるから、デート映画で消費されたくないなぁというところも思うのよ。
先ほども書いたんだけど、家族をめぐる話がでてくるの。で、映画の冒頭にも主人公の祖母の若い時期のシーンが出てきて、とてもなんというかうまいなぁと思うわけよ。だからこそ、エンディングがちょっと肩すかしの印象ともいえるんだけど。
ああん、もうっ。ネタバレしたいわ。していいかしら。ちょっとだけ、するわ。もし、アタシがうだうだ言ってるのが見たかったら、アタシ個人の映画評でも見ておいて頂戴(http://www.webdice.jp/user/1909)。せ、宣伝じゃないんだからねっ///(だって、2009年から一度も書いてないとこだもの・・・)
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祖母の結婚式が最初に出てくるじゃない。すったもんだあって、でも彼女(祖母)はほしいものをつかんだ。つまり、自身の意思でね。だから、自身の最期もそうやって自分で選択をした。だから、あのような死因の描き方なんだと思うの。
家族という終焉というか、幕引きをしちゃったわけね。だから、この物語はもはや崩壊というか、トンマーゾが祖母を考えるならば、どう考えたって会社にとどまれないような気がするのよね。
この映画のキャッチコピー(っていうの?)は”他人の望む人生なんて、つまらない”とあるのよ。だからこそ、最後を葬式で終わらせないでほしかったのよね・・・。
親に向かっていったかもしれないじゃん、ですって? そうかしらねぇ。離脱するようにしか見えないのよ。つまり、逃亡よ。もちろん、それもアリなんだけど、そこまで描いてほしかったというか・・・。
だから、公式ホームページの”幸せはきっと来るはず! 最高にハッピーな高揚感”とかが、とっても嘘っぽく見えるのよ。
え、じゃあトンマーゾはこのまま会社を継ぐの? 共同経営者の女(名前は覚えてないけど、イカしてる演技で好きなんだけどね。あの車のミラーをぶっ壊すとこなんて爆笑するしかないし)となんとなくの関係なの?
ローマだかにおいてきた彼氏はどうするのよ? まさか、呼び寄せてハッピーエンドだ、なんて思ってないでしょうね?
仮に、そのようなことを”ノンケ”が思うなら、嗚呼と思うだけだけど、ゲイやレズビアンたちは納得しないんじゃないかしら。だって、エンディングのトンマーゾ(もしくはアントニオ。長男のほうね)と母親、そしてトンマーゾ(もしくはアントニオ)と父親の関係性が改善されるなんてあまりにも楽天的なことは考えないと思うのよねー。
だから、実はこの映画ってとっても旧価値観的なところで評価されているんじゃないか、と心配になったりするわけ。
実際どうなのかしらね。ゲイたちの評価を聞きたいわ。
んー、おすぎさまはちょっと厳しい評価をしそうだから(彼の著作「バカバカバカ!」を読むとね。思い込みかしら)、他の方をお願いしたいけど。
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ええと。タイトルにもあるんだけど、邦題は「あしたのパスタはアルデンテ」。これ、原題と大きく違うのよ。原題は、Mine Vaganti(浮遊機雷とでも訳せばいいのかしら。海に浮いてる爆弾のことね)。そりゃ、パスタ会社の経営も絡むし、食事の場面もよく出てくるし、イタリアだからパスタだっ!てのもわからなくはないの。でもね?
それは主題じゃないのよっ!!! そーゆーことをするから正当な評価をされなくて、なんとなくお洒落ぽい☆ というデート客や暇だから映画見に来た人を取り込めないんじゃないのかしら・・・。
アタシは、いつだったか忘れたけどゲイ雑誌Badiに載ってた「爆発物」(おたりさとし)を思い出したのよ。つまりは、今のところはトンマーゾも親との関係もなんとなくうまくいっているように“見える“。
でも、その平穏はいつやぶられるかわからないということ。エンディングを大円団と見る人は多分、アタシのような「肩すかし」を受けないと思うの。
いろんな伏線を考える限り、どう考えてもこの後大変なことが起きるのが明らかよ。このエンディングでよしとするなんて、まるで「柔らかな頬」「OUT」(いずれも桐野夏生)のラストが蛇足だ、というような人だわよ。
そして、この映画の主人公はどう考えても、実はトンマーゾではなく祖母だったということ。これはなかなか素敵だわ。ジジイ&ババア映画の台頭を期待したいわね(うそ、おおげさ、まぎらわしい、はJAROへ)。
音楽はゲイ受けしそうなもので友人たちと騒いでたり、シリアスとコメディの部分はなかなかバランスがよいよいに思えたわ。一緒に行った友人はサントラを買おうかしら・・・といってたくらいだし。アタシはビビビ(著作権:松田聖子)とこなかったのでパスしたけど。サントラを衝動買いしたのは「トランスアメリカ」くらいまでさかのぼらないとないかもしれないわ・・・。
てなわけで、一人で見て考えるのもよし、お友達と一緒に見て馬鹿笑いしながら見るのもよしの映画よん。
配給会社の方、見てたらアタシに原稿料よろしく☆