ブログ「だめ日記」から
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「ソーシャル・ネットワーク」めちゃくちゃおもしろかった。
世界最大のSNS「Facebook」を立ち上げたマーク・ザッカーバーグのこれまでを描いていると思いきや、意外にマーク本人が考えていること、というのはそんなにクリアには描かれない。むしろマークを取り巻く人々、―それは彼を訴えたり、彼に裏切られたと思ったり、彼を魅了したりする男たちですが―彼らのキャラクターが鮮やかに描かれていて、ああこれは若きCEOであるマーク自身がやりたいことを拡大していくときの、ソーシャルなネットワークを描いた話でもあるんだなとおもう。
マークを訴える男(たち)は、「マークが自分たちのアイディアを盗んだ」といって憤るボート部の双子とその友人だ。この映画には彼らのボート練習シーンなんかがちょいちょい挟み込まれていて、水しぶき舞う白熱の試合の映像がぐいっと入ることで、机を挟んで静かに繰り広げられる訴訟がらみのシーンとの良い対比が生まれる。
彼らはまた坊ちゃんだからコネで学長との面談を取り付けて、とりあえずマークのことを学長に訴えに行くものの、「盗んだとかそんなこといってるヒマがあったら起業でもした方が健全なんじゃないの」というようなことを、もっと厳しい口調で言われたりするところがおもしろい。
マークに裏切られたと思う男は、“共同経営者”としてローンチ用の資金を出してあげるエドゥアルドだ。彼はもちろん彼なりのスタンスを財務担当と自覚して、スポンサーを探したりと奔走もする。けれど、多分その動きというのが、マークにとっては少し鈍く感じられたのかもしれない。マークにとってエドゥアルドの何が気に入らないとか、逆に他のもっとしっかりして額も多い資金提供者が見つかったからただ捨てたんだとか、そういうことは実はそんなに明確には言われない。だからまあ「甘かった」というのが大方の見方なのかもしれないけど、やっぱりエドゥアルドのスピード感が、マークの体内スピード感と全然違った…というのが決定的だったのではないかなと思う。
マークを魅了する男は、映画中盤にきら星のごとく現れる、Napsterの設立者、ショーン・パーカーだ。クラブによくいるような、感じの良いよく喋るスマートなイイ男みたいのが突然出てきて、「The Facebook」はよくない、「The」を取ってシンプルに「Facebook」だよ、なんてことをさらっと言って帰っていったら、おおーってなるね。映画冒頭で女の子に意味わかんない暴言を吐いてふられるようなマークには、ただショーンに焚きつけられたとか惹かれたというよりは、ショーンのような立ち居振る舞いが、自分に欠けているものとしてのちのち必要になると考えたのかもしれない。って別に映画の話ですが。
という感じで、Facebookが急成長していくそのスピード感と映画のテンポが見事に合った傑作でした。
ビジネスの映画というとやっぱり、おっさんたちの軽やかだったりどす黒かったりする生き方を描くものというイメージがありますが、こういう「若い人のビジネス」っていうのは観ていてとてもおもしろい。若さが仕事に与えるいろんな要素が伝わってくるから。
ところで全然関係ないけど、「アメリカン・サイコ」の名刺のシーンが大好きです。
American Psycho: Business Card Scene
http://www.youtube.com/watch?v=qoIvd3zzu4Y
ところで、デヴィッド・フィンチャーが目下かかえてる作品は、「ドラゴン・タトゥーの女」(来年2月公開予定)、あとアンジェリーナ・ジョリーで「クレオパトラ」(プリプロの噂)、あとキャプテン・ニモの話(これもプリプロという噂)とか。