こんなにまでも前のめりで真剣になってみた映画はひさしぶりだ。
最初から最後まで展開が全く読めない。
台詞を一つ一つ注意深く、聞き逃さないようにしていないと、登場人物の心の動きが読めない。
ひとつひとつの台詞が重要な意味を持ち、男女4人が発した言葉で物語が動いていく。
台詞と台詞との間にある「沈黙」も重要だ。
この「沈黙」が物語に緊張感を生む。
沈黙の後の言葉に、普通の芝居に感じる嘘っぽさがまるでない。
この映画には脚本がないのだ。
役者たちは、最初から決められた台詞を言って演技するのではなく、感情の動くままに言葉を発し、行動し、衝突する。
だからこそ、どこにでもあり誰でも体験するであろう「普通」の恋愛模様がこれほどまでに面白く映る。
登場人物は4人。
それぞれの思いが交錯し、映画が終わってもこの4人の行く末が気になってしまう。
4人と一緒にイライラしたり、怒ったり。
ここで何でこんなことを言うのかと思ったり、どうしてこんな人を好きになるのだろうかと疑問に感じたり…。
4人の感情+傍観者である「私」の思いが交錯して、約90分という短い映画なのにも関わらず、遊園地のジェットコースターのようにスリリングで、忙しい。
この4人の恋愛感にはあまり共感することがなかったが、何回も見るとまた違った目線で見ることができて、あの時彼はこういった感情でこの言葉を言ったのではないかだとか、この時彼女はこう思ってこういう行動に出たのだろうかというように何パターンもの分析ができて面白いのではないだろかと思う。