面白かった。
実は、前半は少し不安を感じていた。
それは、演出スタイルにこだわり過ぎなことへの懸念。
俳優たちには大まかなプロットだけを指定して、台詞とか動きは俳優たちのアドリブに任せ、その芝居をドキュメンタリーのように撮影していく演出法は一見して異質。
加えて、不自然なくらいに電車の通過音などの雑音を会話にかぶせたりもしていた。
そうした演出は、もちろん必ずしも悪いと言うつもりはないが、映画を楽しむ上で作為が邪魔に感じることを心配した。
結果は、雑念に悩まされることなく、気が付くと映画に没頭している自分がいた。
観終わった時に、単純に「面白かった」と思えたことが、上記の懸念を感じたこともあって、何より嬉しかった。
ストーリーは、三角関係(ここでは四角関係)の典型で、ほとんどその骨組みだけのシンプルなもの。
その分、会話劇を濃密に見せることに集中している。
三角関係といえば、「二股かけている現状を壊したくない」とか「浮気者の相手との関係を断ち切るべきか?それでも続けるべきか?」などの葛藤がつきもの。
当事者たちが直接対決する展開は、彼らがそれぞれ瞬時の選択を迫られる、一種のスリラー。
実験的とも言えそうな即興演出は、定番の恋愛モノというジャンルとはかけ離れていると思いきや、スリラーとして見ると演出法としてベストな選択なのでは?と思えたほどの組み合わせだった。
芝居に作り物っぽさを感じないことが、観る者と登場人物の距離を近づけ、彼らの緊張状態がより真に迫るものとして感じることが出来たからだろう。
俳優たちは、何を言ってどう動くかを自分で決めることになるので、役になりきる努力はより大変であったはず。
その努力も報われたと思う。
なぜならやっぱり「面白かった」と言える映画になっていたから。