「どうやってなおすのかわからないものを壊しつづけるのはもうやめてください」という当時まだ12才の女の子だったセヴァン・スズキの発言は、人類科学文明の発展限界へのまさに警鐘そのものではなかっただろうか。この名文言に触れて、私はアラビアンナイト「アリババと40人の盗賊」の物語に出てくる呪文「オープンセサミ(開け胡麻)」を忘れて盗賊に殺されてしまうアリババの兄カシムを連想する。復興、復旧の術を知らずして、開発されてしまった化学肥料や農薬使用により作られた食材や遺伝子組み換え作物、そして致命的とも云える単に経済効果だけを追求した結果の今回の福島原発被災を誘発した核燃料利用発電方式など、それらの開発関連一連の直接関係者はまさにカシムなのだが、問題は欲張りカシムに引摺られざるを得なかった人々、つまり我々一般庶民にも及んでいる多大な悪影響だ。もしかすると人類壊滅の兆候かも知れない事件や事故が垣間見える昨今だが、我々は自己防衛しないと大変なことになるかも知れない。その意味で、セヴァンの「私たちが望むのは幸せで健康な生活。大切なのは生活の質と健康、そして子供。だから私は自己中心的に自分たちを、どう救うかを考えて行きたい」というこの映画の中での主張が理解できる。セヴァン・スズキに絡む話題が本映画の中核になっていると見られるが、上映時間がやや長いので、30分乃至は1時間ものに再編集したダイジェスト版を、日本中のそして世界中の政治家、マスコミ関係者、評論家などに見せたい。その際、原発に関する部分はクリャス原発の部分を現状生々しい福島原発の場面に振り替えることを切望する。