彼女のことを知ったのは数年前、某動画サイトを見ていた時だった。ほんの数分間のスピーチを聞き終えたとき、自然に涙が流れたことを覚えている。12歳の少女が地球環境サミットで行ったスピーチはその後「伝説」となり、社会に大きな影響を与えた。あれから20年。少女―セヴァン・スズキ―は美しく、逞しい女性に成長し、そして母になろうとしていた。しかし地球をめぐる状況は進むどころか、悪化し続けているともいえる。だからこそ、本作に登場する福岡や福井、そしてフランスの農村で有機農業を真摯に取り組む人びとに希望を感じた。この人たちの姿を、出来るだけたくさんの人に観てほしい。
監督のジャン=ポール・ジョーは前作『未来の食卓』で食をめぐる物語を丁寧に描いたが、本作ではさらに広く生態系、そして核についても言及している。原子力発電所のシーンでは日本のことを考えずにはいられなかった。今なお苦しむ人や自然の姿が浮かび、無力感が襲う。
しかしセヴァンは言う。私たちが救わなくても地球は自力で生き残れる、と。「地球を守ろう」という言葉が溢れているが、地球は私たちが考えている以上にタフなのだ。むしろ救うべきなのは私たち人間自身なのだろう。
合鴨の泳ぐ棚田、カナダのハイダグワイ島―この作品には美しい風景がたくさん詰まっている。この風景をいつまでも見ていたいと強く思う。もういい加減、変化しなければいけない。私たちは馬鹿ではないはずだから。
「どうか行動で示してください」少女の言葉が頭から離れなかった。