2011-02-24

アメリカを買いかぶる人々 vs 中東ユースの潜在能力 このエントリーを含むはてなブックマーク 

自分のブログにだけアップロードしてこっちに書き込むのを忘れてました。4日前のエントリです。http://newsfromsw19.seesaa.net/

*2011年02月20日

アメリカを買いかぶる人々 vs 中東ユースの潜在能力

田中宇のメルマガ『田中宇の国際ニュース解説 無料版 2011年2月18日』号<ソーシャルメディア革命の裏側>を読んで、う~ん、なんだかなあで友人と交わしたメールを採録。友人のメールは概要のみ。

02.19.17.00 GMT

田中宇のメルマガ無料版最新号を転送します。まさか4月6日ユース・ムーブメント(以下A6ムーブメント)関連のウィキリークス公開公電を読んでいないということはないと思いますが、なぜか文中ではそれに触れておらず、それどころか、A6ムーブメントはアメリカの後ろ盾をうけていたという前提のもとに、ムバラク転覆はアメリカが仕組んだという結論を導き出した上で一連の中東情勢を論じておいでです。自説のほうが先にあり、ウィキリークスの内容が自説に合わないので無視したのかしら。

<ソーシャルメディア革命の裏側> http://tanakanews.com/110218net.htm

02.19.17.35 GMT <Y to Me>

これを読むと、このかた、よほどアメリカは全知全能だと思っておいでのよう。アメリカ絶対視の熱狂すら感じる。ウィキリークスは読んでいるだろうが、矛盾が露呈するのでネタにつかえないのでは。前にウィキ リークスはイスラエルに都合の悪い情報を出していないと宣言して覆されたので懲りたのかも。

02.19.23.30 GMT <Y to Me>

以下のページに、田中氏が言うところの<エジプトの「4月6日運動」の若者たちがアメリカの影響を受けていたという履歴についてウィキリークスが暴露したとする2008年12月30日の公電>の和訳があります。

http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2011/02/4620081230-f446.html

田中宇氏の記事は上記和訳の原文である公電に基づいて書いていると思われるが、なぜかソースには言及せず。

02.20.00.35 GMT < Me to Y>

田中氏が公電を元にしているというのはその通りだと思います。この公電はウィキリークス以外の媒体ではテレグラフに最初に掲載されたもので、わたしのブログに記載し、あとで速報していただいた原稿でもふれています。あとで読んでみてください。

http://newsfromsw19.seesaa.net/article/183089476.html
(このエントリのあたまのほう)
http://newsfromsw19.seesaa.net/article/183985713.html
(このエントリの真ん中あたり)

ですが、問題は公電の解釈のしかたです。A6ムーブメントのリーダー(この公電では名前が伏せられていますが、Ahmed Maher アルジャジーラだと「アハマド・マッハー」と聞こえるんですが、たいがい「マへル」と表記されている。どちらが正しいかわかりません)と思われる人物がアメリカで開催された青年運動の会議に出席し、そこで他の国の運動体の指導者たちとコンタクトを持つ一方で、自分たちの運動を支援してほしいとアメリカ当局に呼びかけた。

ここまでが公電で述べられているストーリーです(細かい部分は端折りました)。

重要なのはこのあとで、このストーリーを受け、この公電を書いた大使は、かれらの計画は非現実的だと本国に報告していることです。A6ムーブメントのリーダーは改革までのロードマップを示せなかったし、そのため他のグループをまとめることはできなかった、と報告している。

ところが、このブログ主さんはこのエントリでは、その部分を正確に訳しているのに、その他の記事(この翻訳があがる前の日付の記事のうち、エジプトにかかわるもの数件)では、アメリカはその呼びかけに答えた、と解釈しています。

田中宇も同様で、このブログに影響されたのかどうか、単に自分で読んでそう考えたのか、やはりアメリカはこの運動の後ろ盾となることに決め、そう行動したと解釈しています。

公電を書いた大使は否定的見解であるが、この公電を受けて米政府や国務省がどう行動したかについてはどのようにも解釈できます。アメリカはいまだに強大であり、アメリカの外交能力、諜報能力はまだ高いという前提に立てば、田中氏のような解釈も可能だと思います。

しかし、エジプトの蜂起に対するアメリカ政府(ヒラリーとオバマ)のおたおたした立ち回りぶりを見る限り(それを芝居とでも解釈するのでなければ)、アメリカ政府は大使の意見をいれて、エジプトのユースを見守る以上のことはしなかったと考えたほうが合理的なように思います。

今回の一連の中東蜂起、アメリカはどれもリードできていません。これはアメリカの諜報能力が衰えているせいというより、つかんだ情報を正しく解釈できていない、いま追い落とされようとしている中東各国のリーダーたちと同様、新しい勢力の頭脳と行動力を甘く見ていたせいではないかと思います。

あるいは、こちらのほうがもっとありそうですが、新しい勢力(インターネットで知識とネットワークを得て成長した勢力)自身さえも、実際に行動を起こしてみるまで自分たちの潜在能力に実は気づいていなかったのではないか。だから、アメリカもだれもそれを察知することができなかった。

A6ムーブメントのアハマド・マッハー(マへル)自身、1月25日のデモはチュニジアのあとなのでいつもよりは多く集まると思っていたけれど(いままではデモの参加者より警官の数が多いぐらいだった)、せいぜい数千人と考えていたと言っています。でも、その十倍、二十倍が集まってしまった。

かれらの潜在能力の高さが発揮されるのはそのあとで、小さなデモを経験することと外国の民主化運動のリーダーから得た知識などから足腰も頭脳も鍛えられ、準備ができていたので、予想を超えた群衆を明確な目標をもった運動に導くことができたんだと思います。

おそらく、田中氏はかれらのこの能力の高さがわかっていない。こんなすごいこと、アメリカのバックアップなしにできるわけがないと考えているんでしょう。

わたしの見方は多分に運動側寄りではありますが、その後の中東の動きをみていると、あながち間違っていないと思います。

もうひとつ、わたしの解釈を支えているのは、ウィキリークス(ジュリアン・アサンジ)の権力への嫌悪とそれに軸足を置いた行動です。エジプト以降、ウィキリークスは公電公開をテレグラフを舞台に再開し、いまも扮装の起きている当事国についての公電をほぼ毎日公開しています。そして、その公開には一貫性がある。いくらでもある公電の中から恣意的に選んで公開していて、選択の基準は体制側への明確な反対姿勢です。

ウィキリークスの公電公開手順とアルジャジーラの報道姿勢には共通点があり、双方ともいまの政治状況を変えることに積極的にコミットしています。

アルジャジーラがエジプトの反対勢力を「民主化支持」「民主化要求」と呼び続けたのは非常に有効であり、これはエジプトだけでなく、その後の蜂起のバックボーンを創造するのに役立っています。例えば、バーレーンの反対勢力(青年のグループと野党)も決して宗教のことは持ち出さない、それを言ってしまっては西欧の民衆の支持が得られないことがわかっているからです。かれらはアルジャジーラの報道を通じてこれを学習し、実戦している。

そういった新しい勢力の学習能力の高さと豊富は体力(なにしろ若いので)は、おそらくアメリカの予想を超えるものであり、アメリカだけでない、だれも予想していなかったというのが、現時点でのわたしの解釈です。

いまの中東の一連の革命はアメリカの終わりの始まりでしょう。この革命が一通り落ち着いたあと(5年ぐらい?)に1989年のあとのソ連のようにアメリカが解体するとまでは思いませんが、影響力はうんと小さくなると思います。

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藤澤みどり

ゲストブロガー

藤澤みどり

“英国在住の文化ウォッチャー、芸術とお酒と政治好き。ブログ「ロンドンSW19から」http://newsfromsw19.seesaa.net/”


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