ハンス・ランダが「取引」のあと、ピストル自殺をしていたら、観客を、より動かしたかもしれない。
しかし、それではキルケゴール言うところの「ギリシャ悲劇の英雄」である。
そこから、『大菩薩峠』の机龍之介よろしく、「私利私欲」をむき出しにするのがいい。
そしてタランティーノは更にその先へ行く。
ランダ大佐は、額にカギ「十字」を刻印されるのだ。
「こいつは俺の最高傑作だ」とは、深い問いである。(2010.9.23)
(「坪井野球ブログ」より転載)
http://2boy-yakyu.blogspot.com/2010/09/blog-post_2190.html
今日、二回目を観る。
感想はTwitterに書きましたが、こちらも覚書です。
ネタバレするので書ききれないけれど、やはりヒロイン(ショシャナ)とドイツの英雄(フレデリック)の恋の結末がすばらしい。
(以下、 http://twitter.com/#!/2boy より転載)
タランティーノ『イングロリアス・バスターズ』観る。二周目。自分は『キル・ビル』に引き続き現代アメリカ論としてこの映画を受け取った。ハンス・ランダ大佐が「2回」ヒロインのショシャナを見逃していることに気づく。町山智浩が、ランダ役のヴァルツにインタビューで、彼がショシャナを(続く)
…見逃したのは何故か? と聞いている。この質問は非常に優れていると思う。映画は勿論、歴史も文化も全然蓄積のない自分が勘だけで、ひとつ仮説を言ってみる。作中映画『国家の英雄』でスナイパーが立てこもり上方から射殺しまくる「塔」は、「世界貿易センタービル」の暗喩かもしれない。
タランティーノはビルを爆発させる。正確にいうとビル実物を破壊するのではなくて、ビルについて語る(プロパガンダ)映画をぶっ壊す。ぼくは『キル・ビル』シリーズも、文字通り「ビル」を殺す映画だと思っている。罪人が服を着替えて市民に成りすますというモチーフもPF〔Pulp Fiction〕、KB〔Kill Bill〕、IB〔Inglourious Basterds〕と成長してる。
(2010.10.24)