2010-12-30

『ANPO』メモA──リンダ監督と西川美和の対談を元に このエントリーを含むはてなブックマーク 

2010.12.21
アップリンク・ファクトリー『ANPO』上映後
リンダ・ホーグランド監督×西川美和監督の対談を元に、断片的なメモ

※「」でくくられている箇所も、発言の意図を元に、書き手が再構成(?)したもので、情報精度は高くないです。

(基本情報)
 西川監督は広島出身。
 是枝裕和の弟子筋(?)に当たる(うろ覚え)。
 で、その是枝監督の『幻の光』(1995年、原作:宮本輝)の字幕をリンダが担当している。

 リンダは字幕のプロフェッショナル(でもある)。
 黒澤明(主に三船の出演作)については、相当の数を(英語)字幕の担当をしている。
 リンダ曰く、「〔元の〕英語字幕はひどかった」。

(トーク本編?)
 リンダ「ぜひ西川監督のデビュー作『へびいちご』をご覧になってください。冒頭の葬式のシーンで、サラ金の取立てが現れるけれど、そのサラ金のセリフを、ガラ悪くするのが大変だった」

 2003年、アメリカによるイラク空爆前という状況で、西川はニューヨークの催し物(何かは失念)に招かれ、リンダのGOサイン(?)に勇気付けられ、かなり強くアメリカの罪を問うような発言をした。場の空気が変わった、らしい。

 リンダは、岩国で育った(この辺り、情報不正確)。
 彼女は日本人の通う普通の小学校に行っていたので、外国人(主に米国人?)向けの学校に通っている子供たちよりも、(日本におけるアメリカ人としての)自分の立ち位置(ポジション)について自覚的だった。
 「〔そのことを考えているという点で〕私はえらい。(えらかった)」(当時、リンダは若干8歳。)

 西川美和は、母が岩国出身。

 『日本風俗史』という文献が重要らしい(発言者不明)。

 コロンビア大学に所蔵されている日本の新聞を網羅的にリサーチして、ジョン・ダウワーですら見ていない、あの死体(の山?)に埋もれた娼婦の写真を発掘した(この辺は、書き手が覚えていない。補足のコメント、歓迎します)。

(以下、断りのない限り、リンダの発言)

 「安保」を「発見」したのは、映画から。
 今村昌平監督の59年作品『にあんちゃん』と61年作品『豚と軍艦』を比較すると、全く異質のものである。簡単に言って、後者は重い。
 成瀬巳喜男も、60年を境に、作風が変わる。
 黒澤明も、60年に『悪い奴ほどよく眠る』を公開。(前作は58年『隠し砦の三悪人』)
 大島渚は、言わずもがな。
 ここには、なにか断絶のきっかけとなるものが横たわっていると推測した。

 そこのところへ、濱谷浩『怒りと悲しみの記録』(1960年、河出書房新社)に出くわす。
 また中村宏の「砂川5番」や、××(書き手失念)による、零戦がマンハッタンの摩天楼を空爆する絵画などを発掘する。

 この映画(『ANPO』)を創ったことにより、ニューヨーク映画祭に呼ばれる。そこで(映画の)編集に携わった人間の父親(共和党関係者?)──彼は非常に保守的、コンサバティヴな思想信条の持ち主の筈だったが──から、
 「よく〔憤り、怒りの〕感情を抑制して映画をつくった」
 と言われた。

 『ANPO』は(アメリカで?)、教材としてひっぱりだこの状況にあるらしい。
 60年安保のテクストがなかったし、(大学)教授たちは、リベラルな人が多いので。

 『ANPO』を教材として(日本、アメリカの)若い人たちに。(見てもらいたい、という旨の発言だったか。)

 『ANPO』は、構想期間・準備期間は別として、35日間で撮った。
 この驚異的な段取りのよさは、TV番組「アメリカ横断ウルトラクイズ」に携わっていた経験などから培われたらしい。なので、リンダは、ちょっとやそっとのことでは動じない。
 その彼女ですら、恐かったのが、大島渚と、ニジカワ(ニシカワ?)の二人。

 人間、怖がらないと(恐怖を克服すると)「いい顔」になる。
 映画のスタッフからも、石内都氏はかっこいい、と評判だった。

 たくさんの、(安保に関連する?)絵画が倉庫に眠っている。トロント・ニューヨーク・バンクーバーから購入希望のオファーが来ているらしい。

 来月(2011年1月)の ”Art in America” に、記事か何かが載るらしい(適当で恐縮です)。

 ナカムラはピカソ級。
 ブリューゲル。(を思わせる?)
 真っ赤な雲の絵。
 ジャクソン・なんたらはハナクソ(とまでは言ってないが、酷評)。

 エンリコ・フェルミの孫と会った。

 (この映画を撮って)罪悪感はなくなった。本当に(いまは)ない。

西川:日本とアメリカは、対話できていない。

(かなり長くなりました。質疑応答以降の発言は、分割してアップします。)

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坪井野球

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