僕は数回アフリカを訪れており、現地の人々と触れ合う機会も多い。
そのため、アフリカの「光」と「影」を、少しだけだが実感している。
この映画は、コンゴ(旧ザイール)のバンド「スタッフ ベンダ・ビリリ」が成功するまで、
5年間にわたってバンドメンバーの生活を追うことで、
アフリカ大陸が抱える「光」と「影」の両面をリアルに映し出した作品になっている。
天性のリズム感から生み出される音楽、根っからの明るい人々、どん底でも逞しく生き抜く人々。
そんなアフリカの生き生きとした「光」と同時に、「影」の部分を映像の節々から感じられる。
キンシャサのストリートチルドレン”シェゲ”たちが夜な夜な路上でお金をせびる光景。
セーフティネットなど無い、障がい者たちが置かれた生活。
腐敗して頼る事の出来ない政治…。
こうしたアフリカ社会の底辺で生きるメンバーたちの、日常会話の中でこぼれる言葉から、
「這い上がって成功したい」という心情が伝わってきて、こちらの心に響いてくる。
そして、映画を通して感じるのは、やはり『スタッフ ベンダ・ビリリ』の音楽の素晴らしさ。
彼らの曲にはアフリカのどん底で生きる事の「理不尽さ」が根底にあるように感じたが、
しかし、それは決して暗くネガティブなものではない。
彼らは、「音楽」というカタチで表現することで、心の支えにし、生きる糧にし、仲間との繋がりを保っている。
まさに「ベンダ・ビリリ」のメンバーたちにとって「音楽」は「生きること」そのものなんだろう。