2010-06-27

『デルタ 小川国夫原作オムニバス』クロスレビュー:映画体験、改めて気づかせられた光の重要性 このエントリーを含むはてなブックマーク 

抑うつ的な空気感が全作品に漂っていた。単にネガティブというわけではなく、自分と向き合い見つめなおすときの大事な時間、そのときの感覚が思い起こされた。
その中でも『誘惑として、』は、非の打ちどころの無い短編映画だと思う。静かだがエネルギーに満ちていた。確かな技術があることが随所から伺うことが出来た。また、言葉ひとつひとつに深み、重みを感じた。演じる役者全員がそれぞれ魅力的だった。セリフに強度があった。
撮影技術がすごい。構図が完璧であり、光への探究が凄まじい。光と影について、赤と青の光について、映像においての最も重要な要素である光を楽しみながら撮っているように感じた。光によって人の表情は変わる、画面全体の印象が変わる、光によって世界の見え方は変わる、それら基本的なことに改めて気付かせてくれた。
女の顔に当たる光が赤から青に変わるシーンが特に印象的だった。セリフ、音も完璧だったため、女が一気に遠い存在に感じ、少し恐怖さえ覚えた。
大変見応えのある作品だった。近いうちに長編作品もぜひ撮って欲しい。

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林誠太郎

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