「少女革命ウテナ」や「セーラームーン」でもすんなりとストーリーが進行させない幾原さんの原作漫画なので、これもそうだろうとの予想は見事に当たったが、前記二作品よりもキャラクターが華麗で楽しいとは予想外だった。しかも、このキャラでハードボイルド、と意外性に富んでいるところも、これから読む人にはおすすめしたい読みどころだと思う。
タイトルが「ノケモノと花嫁」なのだから、カケ落ち話からスタートするのは当然なれど
途中から全然違う展開になってしまう。第二巻以降、どうなってしまうのだろうと思いながら巻末まで読むと、この物語を絵にしてもらうイメージとして、デビット・リンチの「砂の惑星」、寺山修司の舞台「レミング」、クーブリックの「時計じかけのオレンジ」の三つの映像を見せたとの話が書かれてあり、この作品のキャラの意味や展開がなんとなく読めてくるような気がしてくる。
「レミング」にしても「時計じかけ...」にしても、主人公が正反する二つの世界を行き来する。主人公が今いるところが現実なのか夢なのか、主人公の目線で観ているととこちらも戸惑ってしまう。その戸惑いが両作の魅力のひとつなのだが、この「ノケモノと花嫁」も、自分をとりもどそうとしている主人公のイタルも、そこが現実なのか夢なのか、一巻目ではつかみきれないままとなっている。幾原さんは、現実か夢か、という定義はしていないが、二巻目以降、読者と主人公にこれからもさまざまな華麗な世界を見せつづけて、その華麗さに戸惑わせてくれるはずだ。そして最後には、「時計じかけのオレンジ」のように、元に戻つてしまうのか、というのがあくまでも私個人の予想である。
ギャグもキレのいい(個人の感性にもよるだろうが)この漫画は、私はけっこう多くの人に指示されると思う。続きはさらに面白くなるのは間違いないのだから、次の発刊もぜひ、期待いっぱいに待ちたい。