昨晩深夜、夕食を食べ終わった後、焼酎の抹茶割りをチビチビやりながら、レンタルした『居酒屋兆治』(監督:降旗康男。脚本:大野靖子。原作:山口瞳。出演:高倉健、大原麗子、加藤登紀子他。1983年)を観る。
幼なじみの英治(高倉)とさよ(大原)は、恋人同士だったが、生活のために別れ、英治は漁師の娘である茂子(加藤)と、さよは裕福な牧場主(左とん平)と各々函館市内で結婚し、各々二人の子どもをもうけている。情が厚い英治は、仲間をクビにするのを嫌って、会社を辞めた直後の短期間、酒に溺れ、荒れた生活を送ったこともあったが、今は、場末のもつ焼きやの主人として、妻と共に、黙々と働いている。しかしさよの方は、未だ英治のことが忘れられず、市場で偶然英治と茂子夫婦の姿を見かけた直後に、動揺のあまり、自宅を半ば故意に全焼させた後、行方をくらましてしまう。
英治へ恋いこがれたさよは精神の均衡を失い、偽名ですすき野のキャバレーに勤め、場末のアパートに身を隠しながら、英治の姿を追い求め続ける。深夜英治の店に度々無言電話をかけ、一度は、開店準備中の英治の店(兆治)を訪れる。そして、英治への思慕が満たされぬ憂さを酒で紛らわし続け、最終的には、過度の飲酒のため、自室で一人吐血し、絶命したところを、彼女を捜しに来た英治に発見される。
英治は、家族と仲間達への情のために生き、過去の挫折や、もつ焼きや亭主としての苦労を、そしてさよへの思いも、閉店後一人で、あるいは気の置けない仲間と呑む少量の酒で、抑え流している。それに対してさよは、今では別の女性と家庭を築いている、昔の恋人・英治に恋い焦がれるあまりに、酒で自らの心身を破壊してしまう。
英治の生とさえの死を通じて感じたのは、情と酒が、人を癒しも蝕みもするものであること。僕も、英治のように情に生き、酒を嗜めればと思う。