本編とは全く関係ないところで、この映画には一つの落ち度がある。予告を観ると、結末までの筋書きがわかってしまうのだぁぁぁ。だからなるべく予備知識を入れずに劇場へgo!
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冒頭、アップで映る中年の白人女性。化粧っ気がなく肌もボロボロで、実際の年齢より老けていそうだ。彼女の目からほろりと涙が落ちる。引き込まれる。たぶんこれからすごい映画を観ることになるだろうという予感・・・。
住んでいるトレーラーハウス全体が映し出される。彼女、レイには二人の子供がいて、一人はまだ幼い。日々の生活にも、食べるものにさえ困っている様子がうかがえる。さきほどの涙は、そんな切羽詰まったギリギリの環境で、思わず溢れてしまったものだろう。
見ているだけでも寒くなるような国境の凍りついた町。レイは若い先住民モホーク族の女性ライラに出会い、不法移民の密入国に手を貸すことになってしまう。子供のために仕方なく犯罪に手を染めていくレイに対し、ライラの動機は謎だ。しかし、彼女にもまた目的がある。一見、結びつかないような二人に共通点が見えてきたとき、奇跡のような絆が生まれる。
観る前はただのサスペンス映画と思っていた。実際、サスペンスとしての要素だけでも十分成り立つくらいスリリングである。しかし、緊張した密入国ドライブの最中に二人が子供の話をしていたり、ほのぼのとした一瞬もあり、普通の人がやむ追えず犯罪に追い込まれたという身近な目線を作るのが上手い。本作で長編デビューを飾ったコートニー・ハント監督の、練り上げた脚本の賜物であろう。
レイを演じるメリッサ・レオ、そしてライラ役のミスティ・アップハムの演技が素晴らしい。けしてスポットライトを浴びることのないような人々をごく自然に演じ、物語のリアリティを高めている。
二人の間に生まれた絆は、言葉にしてしまえばありふれたものだ。だからあえて書くのはよそう。それがどれほど熱く強いものなのか、映画館で感じて欲しい。