初めて本作のポスターを見た時、
主人公ジュリエット役のクリスティン・スコット・トーマスの
“無”な表情が強く印象に残りました。
そして、最初に興味を持ったのはジュリエットが息子を手に掛けた動機です。
全ての始まりとなるこの罪状の背景に何が隠されているのか
知りたくてなりませんでした。
勿論、これが物語の中心ですし、クライマックスなのですが、
それが語られるまでに至る人間模様の描かれ方が、さりげないんだけれども鋭かったです!
そういうシーンに何度も胸を締め付けられました。
まずは母親との再会のシーンです。
痴呆症の母親が一瞬ですが英語で話し始めたことで、
事件以来、ジュリエットを亡き者としてきたけれど
やはり娘として記憶していることがわかります。
次に、レアが子供の頃から書いていた日記帳。これにも涙でした。
レアは姉の事件のトラウマにより
自分の子供を産みたくなくて2人の女の子を養子にしました。
2人の娘を姉と自分に置き換えているようにも見え、
血の繋がりに関係なく家族の有り方、家族の絆を
大切にしているのが伝わってきました。
そしてやはり、一番グッときたのは
ジュリエットが心の内を告白した涙ですね。
それまでは、笑わない、泣かない、と人形のようだったんですが、
この涙を流せたから、ラストで「私はここよ!」の明るい声が
出るようになったんだなと思いました。
長い間「息子への愛と罪」だけが頭にあったジュリエットが、
自分が息子を想うように
自分も周りの人々から愛されていたんだと気付いた瞬間、
ジュリエットが生き返ったような気がしました。
やはり人は一人では生きていけない、
誰かを支え、誰かに支えられて生きているのだなとしみじみ思いました。