静かなオープニング、迫り来るどきどき感。冒頭の幸せな家族の風景は絶対に、これから起こると予想される惨劇の中身を増幅させるための演出なのだ、と思ってしまうため、逆に目を覆いたくなる。この「目を覆いたくなる」感は、作中終始私を襲い、途中で「もう勘弁して!」「判ったからもう止めて!」と心の中でがんがん叫んでいた。ノーマルなホラー映画よりも恐怖な題材…息子の命を奪われる…!家族の尊厳を踏みにじられる…!
鑑賞中、さんざんハートを傷めつけられた訳だが、ケビン・ベーコンのオヤジ魂にこれまたノックアウトされる、という訳だ。フツーのオヤジから狼に成り変っていくその様の凄さ。迫力以上の情念のようなものを感じてしまう。
この作品の凄い所は、ケビン・ベーコンの変貌もさることながら、人間の持つ凶暴性がそれを覆う社会性を超えた時に、どうなってしまうのか、を淡々と見事に描き出している所だと思う。ただの「パパ、カッコイイ」というオハナシでは勿論、無い。「同じ穴の狢(ムジナ)」的な烙印を押されながらも、ラスト尊厳を保ちつつ朽ちていくケビン・ベーコンの、なんとスタイリッシュなこと。そう、この作品は、古くは「ゴッドファーザー」から脈々と続く、血と、愛と、復讐のノワール劇に属し、一匹狼のスタイルを貫いた、男の生き様を見せ付ける映画作品の最高峰と言えよう。
今夜、オヤジ魂に乾杯!