狼の死刑宣告、予想していた以上の出来栄えに驚いた。ケビン・ベーコン演じるニックという男、投資会社の副社長を務め、お金は勿論、家族と平和に暮らす、いわゆるエリートである。
長男のホッケーの試合見物の帰り道、立ち寄ったガソリンスタンドで、ストリートギャングの仲間入りの儀式に巻き込まれホッケー選手として未来を嘱望される長男が殺される。ここからニックの復讐がスタートするのだが・・・
副社長として、部下の小さな不正でさえ決して認めないほどの男が復讐という行為を迷いながらも選択していく背景描写も説得力がある。裁判で陪審員対策として弁護士が取引をすることをニックに迫るシーン、担当の刑事が何故か客観的で殺人事件にもかかわらず一歩引いた対応をするシーンなど。もし私がニックと同じ立場だったら、やりきれない思いにさいなまれる事も理解できる。ストリートギャングになるための儀式のためだけに最愛の息子を殺される、まったくの無駄死にである。ある決意でニックは証言拒否、犯人は無罪釈放となる。
犯人の居場所を突き止め、ゴミ置き場で鉢合わせしたニックと殺人犯。まだ復讐に迷いが見られるニックは犯人ともみ合う中、ナイフが犯人の胸に・・・
ここからストリートギャング達との戦争が始まる。逃げるニック、追うギャング。息もつかせぬ場面に緊張感が高まる。特に街中からビルの中を抜け駐車場まで逃げるシーンのカメラワークは素晴らしい。ギャング達の執拗な復讐はニックの家族におよんでしまう。
妻を殺され、次男も瀕死、ニックも撃たれて重傷の中、ニックの復讐心は最高潮に達する。預金をおろし、闇ルートで銃を調達、357マグナム、コルト45、長銃身のショットガン、デザートイーグルなどガンマニアも納得のシーンが嬉しい。髪を切り息子のジャケットを着て夜の街へ出かけるニック、ギャング達との最終決戦の場へ。銃の扱いに慣れないニックが徐々に復讐鬼として変貌していく。激しい銃撃戦の末、ギャングのリーダーと二人だけになったニック。このシーンのセリフはこの作品のテーマに通じる。
何が正義で何が悪なのか、何が優しい普通の男を凶暴な復讐鬼に変貌せるのか?ケビン・ベーコン演じるニックからそんな事を考えさせられる。本当に頼れるものは警察?自分自身?
日本でも警察に対する不信は大きい。冤罪しかり、訴えがあっても捜査しない、ましてや警察官自体の不祥事も頻繁である。
この作品は現代に即した新しいヴィジランテ映画である。草食系から肉食系に変貌するニックの姿にこの時代に必要な生き様を見たような気がする。そんな作品だ。
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