(ストーリー)
真の「正義」とは…?
国境をめぐる犯罪に、
たったひとりで立ち向かう-
ロサンゼルス-南北アメリカの国境に近く、東洋と西洋が交差するこの街には、
夢を追って来た若者、一家で移住してきた家族、そして無断で国境を越えてきた不法就労者まで、あらゆる人種が集まってくる。
マックス(ハリソン・フォード)は移民局I.C.E.に所属するベテラン捜査官。
不法滞在者の取締りが任務だが、正義感が強く良心的なために、彼らの立場に同情的だ。
母親の逮捕後に残された幼い子供が気になってメキシコに送り届けるなど、つい彼らの面倒をみてしまう。
そんなある日、同僚の捜査官の妹が殺される。遺品の服に偽造グリーンカードを発見したマックスは、独自に調査を始めるのだが…。
「国を守る」ために彼らを逮捕しなくてはならない立場にいるマックスは、果たして本当の意味で彼らを「救う」ことができるのだろうか。
(チラシより抜粋)
人種の坩堝、アメリカの抱える大きな問題を様々な立場の移民や移民局の目を通して、群像劇として扱った重厚な社会派ドラマ。
国際化が進む世の中、決して日本に住む我々にとって、第三者的な立場で見るべき作品ではなく、日本でも同様なことが起こっているのではないか、という目で見るべき内容だろう。
主演は円熟の域に達した名優ハリソン・フォード。
脇を固めるのは、レイ・リオッタ、アシュレイ・ジャッド、ジム・スタージェスら、なかなかの豪華キャスト。
そのキャストに裏打ちされるかのように、実に見応えがあり、いろいろ考えさせられるストーリーであり、また、数々の群像劇が、物語の進行とともに一本の糸へとつむがれていく様は、見事なものである。
メキシコ出身の不法移民母子、イラン系アメリカ人で移民局で働くハミードとその一家、永住権取得を望むオーストラリア人女優、韓国系移民高校生とその家族、バングラデシュ出身の少女とその一家、南アフリカ出身のユダヤ系移民、ナイジェリア出身の孤児……そんな移民たちの周囲に現れる、移民局の局員たち、移民判定官、FBI、移民を守る弁護士……。
いろいろな思惑が入り混じり、人間の汚さ、移民への差別、「国を守る」と言いつつ何を守っているのか?という問題、9.11以降異様に「テロ」を警戒するアメリカ社会、市民権を得ることの尊さと難しさ、言論や思想の自由が許された国という建前と現実……そんな現代アメリカの抱える問題点や、アメリカで移民が暮らす難しさをまざまざと見せ付ける。
その一方で、温かい人情や、自由の国アメリカとして受け入れようとする人々も描かれていることが、心の救いとなる。
もっともっと開けっ広げで、大らかな国だと思っていたアメリカ……。
現実は、決して甘いものではないのだな、と思い知らされることになった。
「国を守る」という大義のため、時には家族の絆さえ断ち切ってしまう国境という壁の高さ、アメリカ社会のあり方。
正直、ショックを受ける部分が少なからずあった。
まだまだ肌の色や宗教、思想、何事をも差別の材料にしてしまう文化なんだな、と。
これは、決してアメリカだけが抱える問題ではなく、世界的な問題なんだろう。
もちろん、日本でも同じ。
大事なことは何なのか、平和な世界や、先入観や偏見なくあらゆる人々と心が触れ合える世界というのは単なる理想に過ぎず、人は他人を救うことなどできないのか?
実に生々しく、「大事にすべきものは何か?」という究極の質問をぶつけてくる作品。
もう一度内容を頭の中で整理しながら、世界が抱える問題について、深く思考を巡らせてみたい、そう思った。