スパイク・リー監督の作品にはいつも強いメッセージが込められているのですが、今回もまた、大きなメッセージを受け取ってしまいました。
人は皆、平等でなければならない!
そして、
戦争は愚かな行為だ!
この映画の大部分はイタリアのトスカーナ地方での出来事です。
第二次世界大戦中、アメリカ軍はナチスドイツと戦うために、イタリアへ軍隊を送り込みました。その中に第92歩兵師団(通称バッファロー・ソルジャー)もいたのです。
この当時、アメリカでは人種差別が当たり前の時代でした。学校も、レストランも、電車もバスも、水道の蛇口さえも白人用と黒人用に分けられていたというのですから、本当に徹底して差別していたのですね。(この映画の中でもそういうシーンが出てきます)
ですから軍隊においても、差別は当然でした。黒人が士官となることは許されておらず、海軍航空隊および海兵隊航空隊から黒人は排除されていた上、1つの部隊に白人と黒人が混ざることすら許されなかったのです。(混合部隊が作られるようになり、黒人でも士官になれるようになったのは、ベトナム戦争以降だそうです)
部隊をまとめる士官だけが白人で、戦争の真っただ中にいてもまだ「黒人なんか!」というスタンスを取り続けているのです。それに比べて、イタリアの人たちの温かいこと!「ここに来て初めて平等に扱ってもらえた」という兵士たちの言葉が切なかったなぁ。
ボブ・マーリィの曲で「バッファロー・ソルジャー」というのがあるのですが、その意味をこれまで知らずにいました。この曲は、差別に負けずに頑張った兵士たちを称えて作られたものだったのですね。
戦争というのは本当に虚しいものです。戦っている個人個人が憎しみ合っている訳でもないのに、どうして殺し合いをしなければいけないのでしょう?
この映画の中でも、黒人を人間と思っていない白人の士官よりも、敵国であるドイツの士官の方がずっと人間的な人でした。(彼が自分の身を守るためにと渡してくれた銃が、ああいう所で役に立つとは思いませんでした。)
この映画で忘れてはいけないのは、アンジェロくんですね。自分を助けてくれたトレインを「チョコレートの巨人」だと思っていて、舐めてみたら甘くなかったと言っているところが可愛かった~!
アンジェロを英語読みすればエンジェル、つまり天使です。彼の存在は間違いなく天使でした!
監督のスパイク・リーは、様々な黒人の歴史を描いてきました。辛い歴史に押しつぶされてきた多くの人たち、それを打ち破ろうとしてきた人たち、社会の底辺で生きる人たち、白人でないというだけで差別されることの虚しさ、辛さをいつもストレートにぶつけてきました。
この作品は、これまでとはちょっと視点が違うように思えます。
世の中のほとんどの人は善人なのに、一握りの邪悪な人のために酷い目にあってしまうということ。けれども、人々の善意は必ず報われるのだということ。愛は時空を超えてつながるのだということ。
この映画を観て、日本も戦争をしたのだということを、今も戦争をしているところがあるということを考えてください。