『マルコムX』からスパイク・リー作品を見始めた自分には、これが「スパイク・リー監督作品」と聞かされずに見たら、後から知ってもにわかに信じがたかっただろうと思う。最近の方向性がすべからく予想外なことが多かったにしても、これは・・。
まるで往年の名作でも見るかのようなデジャヴ感に、クラクラする。堂々とした味わいのあるしっかりしたテイストに、驚くばかりに惹きつけられる。
この映画、2時間40分とかなりの長尺だ。しかし、それを補っても余りあるパワフルな作品であることには違いない。この夏もしかしたら一番の問題作!?になりそうな予感がする。これは事件になりそうだ・・・!この辺りがやっぱり、スパイク・リーたる所以なのか・・・。
第二次世界大戦下のイタリア。そこへやって来たアメリカ軍“バッファロー・ソルジャー”。バッファロー・ソルジャーとは、まだ差別の残るアメリカで、アフリカ系アメリカ人によって編成され、イタリアに派遣された「第92歩兵師団」のニックネーム。
イタリアはイタリアで、前任のムッソリーニがナチス・ドイツと手を組んだことにより戦火に見舞われ、さらにパルチザンが革命活動を行っていた時代。内乱と大戦とでイタリア庶民は貧困に喘ぐ。
イタリアの田舎の美しい風景に登場するのは、それぞれの理由により戦う人々たちだ。だが、“出会いの物語”でもある。適度にユーモアのセンスの感じられる描写は温かい目線が感じられる。人と人の絆が描かれ、物語が進むに連れ、誰が何のために始めた戦争で、それぞれ個々として、何のために戦っているのか、大きな疑問が浮かび上がってくる。中盤の物語からは、最終的にどこへ行くのか及びもつかない。
この感覚こそ、自分が映画に求めるものだったりする。完成度の高さとは関係なく、物語が持つ訴えかける原動力、とてもパワフルで個人的なものになり得るフック。
ただ残念なポイントが二つだけある。一つは、終盤の丁寧な説明口調だ。いかにもハリウッド大作調の、何が何でも説明しなければ気が済まないあの感じ。
それからもう少し描き方を変えれば、少年の存在をもっとミステリアスなものに感じることが出来ただろう。ここが二つ目。
これさえ少し違った描き方をされていれば、自分にとって『ミツバチのささやき』にも似た、大傑作になったかもしれない。・・だからこそ残念に思う。
と言いつつ毎回なんだかんだ気になる人ではある。やっぱり好きなのかも。