2009-07-06

「イサム・カタヤマ=アルチザナル・ライフ」クロスレビュー このエントリーを含むはてなブックマーク 

久しぶりにかっこいい40代を見た。同世代の疲れた自分にスイッチが入った。試写会の帰り道に、にたにたしながら渋谷駅に向かう自分がいた。そんな感じの映画であった。
自分は片山勇を知っている。20数年前にほんのわずかな期間を社員とアルバイトという関係を過ごした程度だ。しかし彼のインパクトは強く、今でも鮮明に思い出される。そんなことから本当は今回のレビュー人選にふさわしくなかったのかもしれないがコメントさせていただくことにする。
 この映画の構成はBACKLASHを生んだ片山勇がどんな人間か、また彼の作り出す作品のクオリティへのこだわりがどれほどのものかを良く表現している。彼を知る人間であれば思わず「彼ってそうなんだよなー」という場面が多く、彼を知らなくてBACKLASHを好きな人からしてみれば「意外?」と思うのではないだろうか。映画の中でも言われていた「毒のあるデザイン」を作っている人間の「笑顔」がそれほどまでに写されているのである。私自身もクールに振舞う片山を想像していたが、20年前と変わらない彼がいたのである。また、各業界のゲストからのコメントが聞けるのだが、その顔ぶれから彼の多彩な人脈を知ることが出来る。客観的に見てコメンテーターのメリットは商業的には無いだろう。しかし片山のために何かをしたいと思わせる魅力が彼にあるということであるのではないかと想像できる。
片山と同世代で普通の生活?をしている人種には縁の無い世界の話かもしれない。私自身もその部類に入るが、物作りに携わる人間に片山のこだわりを見てもらえば「耐震偽装」、「産地偽装」なんかは無くなるのかもしれない(笑)。
 当時、彼から教えてもらったことで忘れられないことがある。店で売っていた革の手袋を手にして「このペッカリー(猪豚)の手袋はどんなに使っても10年は持つよ」と言われ、私がアルバイトをやめるときに譲ってもらった。20年以上経過した現在も何の劣化もなく使っている。毎年冬を迎えるたびに彼を思い出す。最近仕事で妥協の多い自分をリセットできた気がする・・・・

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伊藤 裕基

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