邦画では珍しい空撮ありカーチェイスありのスピード感溢れるクライム・アクション。玉木宏が好演し、他の俳優では無理だったのではないかと思わせる憎々しくも神々しいまでに美しい「結城美智雄」像を作り上げていた。原作と較べ賀来との同性愛的側面が薄れ、関係が単純化されたのは事実だが、その代わりに原作ではさほど大きな役割を負っていない刑事役を石橋凌が膨らませ、結城を追い詰める重要な役割を熱演する。とにかく走り、走り、最後の結城とのMWの争奪戦はスリル満点。
原作には登場しない刑事の部下が物語の肝となる、よくあるラストなど、クライム・アクションというジャンルに寄せすぎの感はあるが、誰が一体手塚治虫の「MW-ムウ-」を厳密に映画化できるのかという気もする。原作と読み比べ、自分だけの「MW-ムウ-」を想像するのもオツなもの。私は同性愛的側面よりも、結城の兄が登場しなかったのを残念に思った。原作のラストの方が私は好きである。例えば結城を松田龍平が演じて、同性愛的側面も十分に描いた「MW-ムウ-」があってもいい。そんなの大島渚にしか撮れないか・・。でもこれを機にシリーズ化やドラマ化など盛り上がるのではないか。それだけのパワーを持った作品である。