物語は直ぐにヒートアップ、
冒頭から身代金強奪のトリックで楽しませてくれます。
少々のトリックなら何だ、この程度かと、
見破れそうなトリックの作品が多い中、幾重もの策を張り巡らし、
その上、さらにもうひと押しして、見事にジュラルミンの
アタッシュケースに入った現生を強奪しちゃうところは
感心どころか、感動ものでした。
そして、今の風潮をあざ笑うかのように
お金さえ奪えば事件の関心は薄れ、
脅迫されていた人の事など忘れちゃうのを利用して
本当の目的を遂げるあたりは知能犯です。
話が単調にならないように新聞記者の話もさり気なく織り交ぜ、
事件の核心に迫っていきます。
この事件を引き起こす実行犯のモンスターは玉木宏さんが演じます。
ボクサーのような凄まじい減量で
完璧なまでに引き締まった身体を作り上げていました。
そのお陰で、良い人というイメージを完全に払拭し、
「悪の権化」の凄みを醸し出し、
主人公、結城美智雄というモンスターになりきるのに成功していました。
彼と同郷の苦悶する神父様は山田孝之さんです。
独特の苦悶する姿は流石の演技です。
彼を追い詰める刑事役には、石橋凌さん、御歳だというのに
たいのシーンでは、ほんと感心なまでよく走ってました。
女っけの少ないこの作品で活躍する女性新聞記者には
石田ゆり子さんです。
彼女の演技は久々に観ました。
清純派だった彼女も、意外な役柄演じていました。
(といって、残念ながら色っぽい役どころではありません)
最後の決着、これは賛否両論あるでしょう。
もともとの手塚治虫さんの原作はもっと生々しいお話で、
結城と賀来との関係も純情風に焼きなおしていますし、
あの結末に、私としてはかなり納得していませんが、
でも、クオリティの高い楽しい129分間を、堪能させて頂きました。
有難うございます、って面白かった映画には、感謝したくなります。