2009-06-26

原作通りとは行かない このエントリーを含むはてなブックマーク 

 手塚治虫、後期の佳作の映画化です、いえ、原案として映画を作ったという方が正確かもしれません。

 原作と比較すると、玉木宏演じる「結城美知夫」と対をなす山田孝之演じる「賀来」のウェイトが低い。美知夫が白を着れば賀来は黒い服、逆であれば白い服を着たりという「対」の表現はしているし、もちろん美知夫の絶対悪に対する神父・賀来というポジションは動かしようがないのですが、イントロが大幅にカットされていて幼少からの関係性が希薄になり、力関係の転倒が表現されていないのが残念です。しかし一番の問題点は賀来と美知夫との肉体関係が描かれないことで、この「関係」を失ったことで、賀来の美知夫に対する愛憎の意味が分かりにくくなってしまったし、さらに美知夫の「悪」がぼやけてしまっているように感じました。またその「転倒」「愛憎」という部分が希薄になることは、上下逆さまに読んでも同じ文字となる「MW」、男性MENと女性を示すWEMENの頭文字を取ったという「MW」、そのタイトルが示す暗喩の根幹を欠くことになっており、その意味でも原作の映像化という表現が合わない映画という点は否めません。

 ただその手塚作品の映像化という面を除いてみれば、サスペンスとして十分楽しめる作品です。得の玉木宏はニヒリスティックな主役を見事に表現しており、東京の上空で航空機が低空飛行するという特撮も違和感なく見られます。都心で撮られた映像が、あからさまに休日の早朝に撮られた雰囲気が強いですが、俳優の演技が気にならなければ問題ないのではないでしょうか。

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tunes

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“いろいろ好きだったりします。”