鑑賞する前の思い込みとして、私はこの作品は「母と子の再生物語」だと勝手に思っていました。離れていても強くより戻る母と子の絆…とか何とか。けれど、実際に鑑賞してみると、この作品はヒロインのエミリー自身がどん底から再生していく話であり、そのための手段として音楽や子どもが存在する、そう思えてなりませんでした。
ドラッグに溺れ、自身の才能と愛する人を失っていく様は、人間の弱さと哀しさを描き出しています。そして、なぜタイトルが「Ｃｌｅａｎ」なのか…？全てをリセットして新たな明日に進みだすから「Ｃｌｅａｎ」なのか、今ある自分を浄化して生きる意味を見出すから「Ｃｌｅａｎ」なのか、いまだに私には答えが見えません。
子どもを持ちながら働く母の一人としての私は、エミリーのことを甘い、と思い許せないし、一方で女としての私は、何かに溺れてしまうエミリーの心情が判らなくは無い…相反する自分の気持ちを持て余しながら鑑賞しつつ、ラストに希望の光が見えたのが救いでした。
エミリー役のマギー・チャンの演技は素晴らしかったです。しかし、何と言ってもこの作品の要はエミリーの義父のニック・ノルティでしょう。あんな義父、現実世界にはそうそういないけどね…。
