ただ海とサーフィンをこよなく愛す、それだけの気持ちからのスタートだったはず。きっと。サーフ文化をただのスポーツではなく、現在何億ドルもの金の動く一大産業にまで推し進めた、そんなオトコたちのアツい物語。
世界で一番の波を求めてオーストラリアからやって来て、寝る場所だけ確保したら後は、来る日も来る日もサーフィンをして過ごす・・・。こう聞くと夢みたいな話。「この世のパラダイス」なんて言う言葉も、ゼンゼン嘘じゃないな!なんて私は、羨ましくなってしまうんだ。
ドキュメンタリーの構成としてはとてもシンプルで、かつ真摯。当時の本物の写真と映像とが多様され、現在のインタビューで合わせて構成。リアルな彼らの風体をすぐそこに感じる等身大の描写が見事だ。そして転換点である’75-76年に向けて焦点を絞っていく。彼らそれぞれのサーフィンへの熱情を描いた後は、サーフ文化をクローズアップさせるための、少々やりすぎオージー達の派手な振る舞いが描かれる。サーフ文化が一大局面を迎えるこの時期、この辺りの物語構成が非常に分かりやすい。そこへ手を伸ばさんばかりの成功に大きく立ちはだかって来たハワイ・ローカルのギャングばりの、ブラックショーツの存在が次第に浮き彫りになってくる。
飲み込まれんばかりの大きな波に、垂直にその下のラインをくぐり抜けていく、“パイプライン”!波の真下に居る当時の彼らを、カメラの真ん中に据えた映像に目が釘付けになる。カモメのような有り得ない姿の瞬間の写真など、忘れられない一瞬に心を貫かれた。
ただ欲を言えばの話だが、俯瞰のショットが欲しかった。彼ら本物でなくとも構わない、波乗りに行く前の“コチラ側”の世界に居るサーファー達、波打ち際のショットから、実際に波が来るあの不安感、素人の私らがビビってしまうほどの、波と自然の驚異的な姿。その対比が欲しかった。実際のストーリーを丁寧に追うのは良かったが、長回しのシーンがただ一つでもあれば、と。それだけが心残りではある。