いや、もう勘弁してください。
誰ともなく思わず謝りたくなるような、なんかそんな気分にさせてくれる8本のロシアアニメーションを堪能しました。
何て言うのか、オカしかったら笑えばいいし、ツマらなければ寝ちまえばいい。でも、これらのアニメーションはオカしいのに笑えない。苦笑ばっかりで欲求不満。ガハハと笑える時間はドコ行った。ナンといってもビジュアルが中途半端にカッコいいから、ついつい見入っちゃって寝るわけにもイカン。いやもう生殺しって言うか、お互いにイカないセックスしてるような感じでキモチワルイ。
それにしても時代は変わる。大真面目にこのようなアニメーションを作っていた、しかも国家が、国のお金で、全国民に向けて、プロパガンダなアニメーションを作ってた時代があった。それを21世紀の今観る意味を考えると、ハッキリ言って「ネタ」なんだろうな。
おそらく、中年から老年期のロシア人は、これらのアニメーションを観れば「ハハハ、こんな時代あったよなあ」とか、「そう、コレコレ、これ学校の体育館でクラス中集まって観たぜ、ああ、ひでえなこりゃ(笑)」的な感じで、酒酌み交わしながらきっと語り合えるんだろう。ロシアのさくら水産的な店で。いや、想像だけど。
映画を勉強する学生なら一度は名前を聞いた事あるだろうジガ・ヴェルドフがアニメーションを作っていたなんて知らなかったが、その作品「ソヴィエトのおもちゃ」の何とおぞましいことか。切り絵のキャラクターもキモチワルイし、アップとロングで絵のタッチが変わるのがとてもイヤ。ほとんど嫌がらせとしか思えない内容と、中途半端なロシアンアヴァンギャルドなグラフィックに、資本主義ベタベタなワタクシなど、脳みそが耳から溶けて出そうであります。
下って60年代や70年代の作品は、ポップなビジュアルにダークな中身。金持ちの資本主義者を犬に見立てた「億万長者」や、ファシストを狼に見立て、ファシストの再興に注意を促す「狼に気をつけろ」など、作品として優れているだけに始末悪い。カッコいいアニメーションなのに、クチの中がネバネバするような感じが残る。無理して教訓話詰め込まなくてもいいのに、と、21世紀の今だから言える事だけど。
我々資本主義者に最も受け入れやすい「射撃場」は、70年代の明るい未来を信じるアメリカへの歪んだ憧れが生み出した作品だろう。ロシア人は豊かなアメリカの様子をユビをくわえてみながら、いいなあアレとか思いつつ、でもアニメーションはお国が色々言うので、なんか批判っぽく作ってみましたという感じがほほ笑ましい。
というわけで、先にも書いたが「ネタ」としてみれば、かなりレベルの高いコレクション。楽しむ、喜ぶ、嬉しい、感動、という普通映画を観る時に求める要素ではない部分を満載した、「イヤな楽しみ方」ができる作品群だ。ちょっと世の中ヒネくれてるアナタにオススメです。