2009-05-26

夢の名残り このエントリーを含むはてなブックマーク 

同じストーリーを実写とアニメーションとで撮ったら断然前者の方が好きだ。人間が全く違う人間を演じるといういかがわしさが好きなのだ——そこで発生するずれ(俳優とキャラクターの、或いは監督と俳優の)も含めて。アニメーションは監督の思い入れが直接キャラクターを成立させてしまっていて、素直すぎてつまらない、とウラジミール・タラソフの『射撃場』を観るまでは、思っていた。

プロパガンダであるので最初から監督の言いたいこととキャラクター&ストーリーラインに「ずれ」があるのは他の作品と同じだ。みんな揃ってクールでキッチュ、監督の思い入れたっぷりの美少女などが登場しないのは嬉しいのだが、ぶったまげたのは『射撃場』、このあまりに衝撃的なアニメーションは、アニメーションでしか出来ないことがあることを知っている。ストーリーラインと絵自体は過激でアバンギャルド、そしてなんといってもフリージャズ風音楽と人物の動きの驚くほどの官能性! それらが相まってなんとも情熱的でカッコイイ世界を形作っている。

1924年に作られたジガ・ヴェルトフの『ソヴィエトのおもちゃ』から1979年の『射撃場』まで、見渡せばこの国はいつでも夢を、情熱を追ってきたのだったと痛感した。

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夏目深雪

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