先週日曜日の夜は、千駄ヶ谷の東京体育館で、ドキュメンタリー映画『タクシー・トゥ・ザ・ダークサイド』(原題“Taxi to the Dark Side”、監督・脚本:Alex Gibney、2007年、米国)上映会へ。
http://sva.or.jp/event/event20090310807.html
日中バタバタしていて、明け方食べて以来何も食べていなかったため、空腹の中千駄ヶ谷まで心持ち急いでウォーキングで。思ったより寒い。
かなりの盛況で、大きな部屋に、横四列で並べた三人がけの机がほぼ満席。
『タクシー・トゥ・ザ・ダークサイド』は、Dilawarという名の若いアフガニスタンのタクシー運転手が、テロ容疑者として米軍に逮捕され、Bagram空軍基地で尋問を受け、数日後死亡した出来事から、「反テロ戦争」の名の下に、米軍およびCIAが、容疑者に対する心理的・身体的虐待を組織的に行い、Dilawarのような犠牲者を数多く生み出した(グアンタナモ基地の「テロリスト」収容所の閉鎖を明言している、オバマ政権が発足した今でも恐らく、生み出し続けている)ことを明らかにし、その不当性を暴き出すドキュメンタリー。
本作によれば、2004年春に衝撃的な写真と映像によってセンセーションを巻き起こした、アブグレイブ刑務所における米軍による、イラク人収容者に対する、様々な拷問・暴行の「原型」が出来上がったのは、他ならぬDilawarを虐殺した、Bagram空軍基地であったという。そしてそれがキューバのグアンタナモ基地での尋問にも「活かされている」のだと。
アブグレイブ刑務所の「スキャンダル」で、国際世論の批判を受けて、多くの米軍兵士が裁判にかけられ処罰されたが、その対象はあくまでも現場レヴェルでしかなく、軍の上層部やブッシュ政権の関係者は罪に問われず、結局「トカゲの尻尾きり」でしかなかったことも批判されている。政治家、官僚、軍人の「見事な」自己保身にも、「脚光が当てられる」。
蛇足だが、一応記しておくと、ジュネーヴ条約(第三条約)(↓)における捕虜の待遇に関する取り決めに違反しているという批判に対して、ブッシュ政権時に繰り返されたのは、テロ容疑者は、民間人でも敵軍の兵士でもないため、同条約による保護の対象とはならないという、「論理」であった。
http://www.mod.go.jp/j/library/treaty/geneva/geneva3.htm
Dilawarという顔の見れる個人の理不尽な死から、反テロ戦争の狂気を暴き出すという方法論は効いている。これまでも幾つか、米軍によるイラク等での捕虜虐待を糾弾するドキュメンタリーを観たが、本作が一番胸に迫った。
実際に個人的にも、同時代にこんな恐ろしいことが起こっているという事態に、改めてショックを受けた。結果、空腹や寒さもあったのだろうが、帰宅後気分が悪くなってしまい、そんなに呑んだ訳でもないのに、月曜は夜中まで寝込んでしまい、一日棒に振ってしまった…。