2009-04-30

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 月曜は夜中まで寝込んでいたので、火曜は明け方食事をして(鯵の塩焼き、焼き過ぎなのか、マズかった…)、朝掃除をしてから、ウォーキングでいつもの下高井戸シネマへ。観たのは、『からっ風と太陽が知っているーーこころみ学園物語ーー』(監督:藤澤勇夫、2004年。劇場初公開)。

 『からっ風と』は、栃木県足利市の山間部にある、知的障碍者施設「こころみ学園」の生活を、(確か)十一年に渡って追ったドキュメンタリー映画。こころみ学園は、知的障碍者施設としては日本で唯一、自前のワイナリー(ホームページあり。ネットで直接ワインも買えます↓)と葡萄畑を持ち、また原木で椎茸も生産している。入所している障碍者は、一年を通して日中は、葡萄畑や椎茸栽培場で働き、また施設の入所者や職員のための調理や洗濯等の家事にも勤しむ。

 http://www.cocowine.com/

 葡萄畑で入所者達が働く様子は、

 http://www.cocowine.com/cocoromi/cocoromi.html

 園長の川田昇さんは、戦後復員して自ら進んで公立学校の特殊学級の担任として働いていたが、知的障碍者の多くが卒業後仕事に就くことが出来ず、その親は自分達が死んだ後の彼女/彼の行く末を深く憂慮している現実を知って、知的障碍者が活き活きと働いて過ごせる施設を、どこの支援も受けずに自力で作ろうと決意して、こころみ学園を立ち上げたという。宗教団体や行政の支援を受けずに、賛同者と一緒に働いて資金をつくったというあたりは、本当に立派。また、川田さんが、いつも作業着姿なのを不思議に思って、『からっ風と』の制作者の女性がその理由を訊くと(彼女曰く「北朝鮮の金日成国防委員長のよう」…笑)、入所者と同じものを食べ同じものを着るべきだと思うからと答えたとのこと。

 ちょっと癖はあるものの、インタヴューアーと普通にコミュニケーションもとれ、他の入所者の世話まで出来る人から、奇声を発するだけでお風呂やトイレなども一人では出来ない人まで、障碍の程度は様々だけれども、入所者の半数は五十歳を越えている。改めて考えてみると、子どもや比較的若い知的障碍者は、多くの場合引率者と一緒に集団でいるのを、町中で目にすることはあるけれど、『からっ風と』に出て来るような、白髪頭の高齢の知的障碍者の姿はあまり観たことがないような気がする。

 『からっ風と』を観ていて、最初のうちは、急斜面の葡萄畑や、寒空の椎茸栽培場で、肉体労働に従事する入所者の姿に、何か知的障碍者を使った強制労働のような気がして違和感があったけれども、身体を使った労働を通じて身体能力が回復・向上し、オムツがとれたり、眼に見えて状況が改善した入所者も多く、正月やお盆等で実家に帰ると、家族は入所者の成長に目を見張るという。

 自閉症の人は、いろんなことをバランスよくは出来ないけれども、一つのことを徹底的に追求させると、「健常者」顔負けの能力を発揮するという。ココ・ファーム・ワイナリーでのワインづくりは、彼女等/彼等のこの特性を活かす格好の場となったようで、その品質は非常に高く、沖縄サミットでも振る舞われた程だと言う。

 会場は杉並区と世田谷区の養護施設から来た知的障碍者の方で超満員。上映中奇声を発したり、館内を歩き回ったり、出入りしたりと、正直ギョッとさせられ、(誤解を招いてしまうかもしれないけれども)期せずしてこころみ学園の雰囲気が体感出来た。作中では幾つかのご家族のインタヴューがあり、皆こころみ学園に入所するまで、我が子に対する世間の冷たい視線に非常に苦労したとのこと。実際に新聞などで最近、知的障碍を持つ子どもの将来を危惧した高齢の親による無理心中事件も目にした。世田谷区の祖師谷で、知的障碍者のグループホームをつくろうという計画は、周辺住民の「地価が下がるからダメ」という声で頓挫したというエピソードが、御自身にも障碍を持つお子さんがいる、「優れたドキュメンタリー映画を観る会」会長の年輩の女性によって紹介されていたが、親御さんの心労と僕自身も含めた世間の無理解が察せられた。

 上映終了後、ウォーキングで笹塚経由で買い出しをして帰宅。軽い昼食を取り、夕方からまたまたウォーキングで某大図書館へ。夜渋谷まで行って、焼酎とワインを買って帰宅。さすがに疲れた。

 ところで、拙宅にも先々週くらいに、定額給付金の申請書類が来ました。しかし一万二千円って何よ…。定額じゃなくて低額給付金に名称変更すべきじゃない?…吾妻ひでおが自分のホームページのイラスト付き日記で、言ってたけど、どうせくれるんなら百万くらい寄越せ!(笑)

 真面目な話、百万ならベーシック・インカムの一つの形とも言えるだろうけれど、一万二千円じゃ、近年強硬し続けた税金や保険料その他の無茶苦茶な改悪を、はした金で誤摩化そうとしているとしか思えないって。

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知世(Chise)

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