何とも不思議な映画である。
カタカナだけの長いタイトルからして、早口ことばみたいで可笑しいが、松山ケンイチ演じる主人公の「水木陽人(みずきようじん)」という名前が暗示するがごとく、彼は「水」と「木」と「太陽」の恵みを受けて農業に従事する青年、なのだが、映画が進むに従って、彼・陽人が少々変った「人」なのだと、観客は徐々に気がついてくる。
陽人くん、劇中では有り余るパワーを制御できないというか、自分を正しくコントロールできていない。正直行動も言動も少々クレイジーな彼が、東京からきた新しい幼稚園の町子先生(麻生久美子)に惚れて、その思いを自分なりに工夫し、押し通してゆく事で、廻りの人間をも巻き込みながら、可笑しくもちょっとキュンとくるラブストーリーを展開する・・・・
というのがザックリしたお話ではあるが、その描き方と言ったら、観終わった後でも唖然とするような、ワケの解らないパワーに満ちあふれた作品なのである。
ワカらん その1
東京から来た町子先生以外は、登場人物全員が津軽弁を喋る。まあ、青森が舞台なんだからリアルっちゃあリアルなんだけど。したがって全編を通して、喋っている言葉が解らない。津軽弁って難しいです。でも、画面を見ながらなんとなく、言いたい意味は解るので、映画を観るぶんには困らんのです。
ワカらん その2
主人公の陽人の行動も言動も理解できない。まあ、理解はできないけれど目的は我々観客にも解っているし、陽人が何かしらの病である事が劇中で示されているので、取り合えずは納得できる。そんなワケわからんけどパワフルでスピード感のあるクレイジー・ボーイを演じる松山ケンイチには脱帽。
ワカらん その3
町子先生が青森に来たのは、交通事故で亡くなった恋人の「アタマ」が未だ見つかっていない、その「アタマ」を見つけてもらうために、青森にいる「カミサマ(藤田弓子)」にお伺いするため。なんだけど、その死んだ恋人が、なぜか青森に登場するのが、ムチャクチャ面白くてワカらん。しかも陽人と仲良くなっちゃうし。死んでるのに(笑)。
ワカらん その4
ネタばれになるので詳しく書かないが、ラストシーンのアレ、あれはアレでいいのか本当に?という感じ。個人的には投げやりで、無責任で、馬鹿馬鹿しくてとっても好きなのだが。これは映画を観た人それぞれが判断するべきだろう。
おまけ
カミサマ役の藤田弓子が、ある宴会で酒を呑み歌を唄うのだが、思わず「めぞん一刻」での一ノ瀬さん役の藤田弓子を思い出した。というか、芸風変らないで安心。
とまあ、いくつかの大きな「ワケわからん」と、全編に渡ってちりばめられる細かな「ワカらん」がたくさん積み重なって、もうノンストップでグイグイ押し通すこの映画は、ボクも含めて多くの人は「??」状態で観ながら、終わった後の「ほっ」とするというか、あとからじんわり「何となく面白かったなあ、今の」という印象がきっと残る映画なのである。
なんて言うのかな、理詰めで考えて観るんじゃなく、本当に感覚で観ると言うか、脳ミソで感じると言うのか、細かな部分はどうでもイイから、この映画の中身すべて受け入れて「好き」か「キライ」をハッキリすりゃイイんだろうと思う。
例えて言うなら東南アジアかドコかに旅行へ出掛け、何だかワカランけどメニューに書いてあった面白そうなものを頼んで、何だかワカランけど食べてみたら、美味かった=好き、不味かった=キライ、ということで良いんじゃないか?という感じ。いやしかし、こんなストレートにシュールでオカシイ映画は久々である。
ちなみにボクは「大好き」であります、この映画。