2009-04-04

事件によって伝説となった二人 このエントリーを含むはてなブックマーク 

 パンクの象徴的な存在であるセックス・ピストルズ。そのメンバーだったシド・ヴィシャスの恋人ナンシー・スパンゲンが刺殺されたチェルシー・ホテル事件の真相に迫ったドキュメンタリー作品です。

 現場となったチェルシー・ホテルは著名人ご用達で色々な映画の撮影にも使われているニューヨークのランドマーク的存在。殺人事件が起きようとも、有名人のシドが絡んでるというだけで、事件さえホテルの価値の一つになっているような印象を受けました。良い事も悪い事も包み込んでしまうといった感じでしょうか。そして数々のインタビューからは、シドとナンシーはどう生きたらよいのかわからない人間だったのだと思いました。
 まずナンシーですが、シド以外からは好かれていなかったことがわかります。死亡願望が強い破滅的な生き方に、誰一人として味方がいなかったようですね。要求の代償やトラブルの清算が薬物か売春なので、ひどい亡くなり方をして同じ女性として気の毒ではありますが、やはり同情はできません。ハッキリとした言葉はありませんでしたが、ナンシーを語る言葉の端々からは、あの亡くなり方は当然の結果なのでは? という皆さんの気持ちが見えました。
 しかし、シドの破滅的な行為や行き方までもがナンシーの責任ではないと思います。繊細でナンシーに依存していたことは間違いないのでしょうが、私は“ネコのエピソード”を聞いた瞬間からシドに嫌悪感を持ち、恐らく他にも同じような事をしていたのではないかと感じました。そして、人々がナンシーについて語るのと同じような気持ちになりました。当時、もうついていけないと思った友人も多かったのではと思います。
 このような二人だからこそ事件によって伝説と化したのでしょうが、亡くなった後に他人の口から語られた事が、その人の人間性を表すものなのだなと、複雑な思いになる一作でした。

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michi

ゲストブロガー

michi

“映画を観ることに生き甲斐を感じています。よろしくお願いいたします。”