「野獣のような」と横浜監督自ら言ったこの映画。まさに、野獣のように荒々しくて、純粋で、現代人ではとまどってしまうばかりの野性の魅力。水と木と太陽の自然人、水木陽人(松山ケンイチ)。彼の言動は、ヒトが獣だったころのパワーに満ち溢れ、彼はとにかく走り、叫び、歌い、転げまわる。でも、はっきり言って陽人は傍迷惑な存在だ。
東京から来た町子先生(麻生久美子)と「両思いになりたい」という単純きわまりない願いで、つっぱしる陽人に、とまどうのは町子先生だけではない。観客の私たちもとまどい、どうしたらよいのかわからない。
でも、ある出来事で陽人はちょっとだけ変わる。その変わったことを「進化」と受け止めた陽人は、その道をつきすすむ。後半になればなるほど、シュールでとんでもない展開に、「こんな結末だろう」と考えながら見ていると、目の前の画面では、そんな頭で考えたチンケな予想などぶっとばすような画像が現れる。
そして、ラスト。このラストシーンは賛否両論・議論百出でしょう。私は唖然としましたが、好きです。こんな脚本を書く横浜監督、やっぱりヘンだ(褒め言葉です)。そして、あんな陽人を愛おしく思わせる松山ケンイチ、やっぱりタダモノじゃない。
ヘンな監督とタダモノじゃない俳優が全力疾走したこの映画、「ウルトラミラクル」にならないはずがない!とにかく、劇場公開が楽しみで仕方ない映画に会いました。